学歴コンプレックスに殺された瞬間

「学歴コンプレックスに悩んでいる」
多くの人は頷きながら、「私もそうだ」と感じるのではないだろうか。
名門校を卒業している友人や同僚をみては、劣等感を抱くこともある。
社会に出てから、自身の学歴が何かしらの壁となり、自信を持てない瞬間が訪れることがある。
私も数えきれないほどそんな経験をしてきた。



さて、私の最終学歴は高卒である。
争うことすらできない複雑で劣悪な家庭環境で幼少期を過ごしたのち、
「義務教育+片田舎の微妙な偏差値の高校卒業」というバッドステータスを抱え、社会に放り出された。


高校を卒業して数ヶ月。
志望大学に全て落ちた私は、意味もなく病院で介護の仕事を始めた。
動機はない。卒業後の進路が決まっていない私を心配してか、知り合いに仕事先を紹介されたから。それだけだ。
一方同級生のSNSでは、やれキャンパスライフだ、専門学校だ、バイトだ資格だ勉強だ、と私が一生手に入れることのできない青春が流れてくる。
その輝かしい「別世界のティーンエイジャー」を見ながら、私は汗水垂らして肉体労働に勤しんでいた。

当然大人になってから自分で学費を貯めて大学に行くことだってできるし、SNSでチェーン店の安っぽい居酒屋で未成年飲酒してイキり散らすことだってできる。
それらを理解した上で、「同年代の友人とモラトリアム共有し、謳歌する」を一生体験できないであろうことに対してのコンプレックスを抱くこととなる。

当時、私には高校3年の時から交際している彼女がいた。
高校卒業後、彼女は片道1時間半もかかる都会の専門学校へと進学し、新たな友人を作り、靴屋でバイトを始め、すぐに「別世界の人」になってしまっていた。

私は片田舎の高卒労働者。
彼女は都会のモラトリアム真っ最中の学生。

私が上司に理不尽な指導を受ける最中、
彼女は友達と洒落た喫茶店でインスタを撮影している。

私は、彼女が羨ましかった。

彼女はそういった私のコンプレックスなど気にもせず、私に対して恋人として平等に接してくれた。
彼女に悪気はないのは重々理解の上だが、その優しさがまだ子供だった私のプライドを傷つけた。

‘高校生時代そこそこ勉強ができていた。だから国立大学を志望していた。
周りより勉強ができるのだから、うまくいくはずだったのに‘

そのような崩れかけの自尊心と、価値のないプライドだけが残る、どうしようもないクソガキだった。
(片田舎の低偏差値高校内での学年順位を誇ったところで、井の中の蛙状態であるが、それに気がついたのはもう少し後になる。)

卑屈になっている私と、素直で自分のやりたい仕事を目指して勉学に励む彼女。
18歳の私には、ただ卒業後の空白を埋めるためだけに就労しただけの自分と、充実した人生を歩んでいる(ように見える)彼女の差はあまりにも大きく見えた。

私は、彼女が憎たらしかった。

・・・

20歳で成人式を迎えた翌日、彼女から別れを切り出された。
成人式で大人になった同級生と会って話してみて、私の幼稚さに嫌気がさしたのだろうか。もしくは別に好きな人がいたのかもしれない。今となっては、本人に聞くことすら叶わない。


しょうもないコンプレックスにより、卑屈で傲慢になり(元からの性格もあるかもしれない)、自身の人生をより方向転換させてしまう。

私が、学歴コンプレックスに殺された瞬間であった。




私の学歴コンプレックスに関わる話は数多くある。
上記はその中でも特に卑屈で、最も自分勝手だったエピソードである。
ちなみにその後の私の人生はここに書くにはあまりにもツマラナイので省くこととする。




「家庭の事情で進学ができず」などというと、
「それはお前の勉強不足だろう」
「その気になれば返済不要の奨学金を借りて国立大にだって行けたはずだ。」
「努力不足を家庭環境のせいにするな」
などの意見にぶん殴られそうで恐ろしい。
だが努力や学力だけではどうにもならない、「不可逆的な家庭の事情」だってあるのだ。
・・・しかし、それもただの言い訳。言い訳。言い訳・・・。

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