2022年ベストソング10選

iPhone の再生数によって、2021年発表の曲を機械的に選びつつ、同じアーティストの重複を省いています。()内は僕の iPhone における再生回数です。

10. Habit / SEKAI NO OWARI(18)

セカオワはラップ調の曲をどんどんやって欲しい。その少し説教くさい歌詞もラップ調だと吐き捨てている感じが出て好き。歌詞の

大人の俺が言っちゃいけない事言っちゃうけど
説教するってぶっちゃけ快楽

Habit 歌詞より

あたりには流石に苦笑で、もうこの歌詞は流石に逆張りでもなんでもないし、耳にタコができるぐらい聞いたのでそろそろ「説教嫌だったけど飲み会全部断ったらそれはそれで人生味気ない」みたいな「次」が聴きたい気がするけど結局まだ世間はこの歌詞でいいって事なんでしょうな。みたいなこととか奇妙なダンスPV含めて、今の流行りそのものって感じの曲でした。

10. Overdose / なとり(18)

AIが絵を描く時代、ここまで洗練されたポップが19歳にて出力されちゃうんだなーって感じの曲。ひと昔前の30代の作曲家が書きそうな曲を19歳に気怠くてちょっとエッチな声で歌われてしまうと、年寄りは何をするんだろーなと、うすら寒さを感じたり感じなかったりしました。

10. I’m Your Treasure Box *あなたは マリンせんちょうを たからばこからみつけた。 / 宝鐘マリン (18)

ついにこの曲でJP VTuberの登録者実質トップに躍り出て、TikTokにて若年層のファンまで獲得したマリン船長。この自己プロデュース力の高さには唸る。サビで少しエッチなダンスに対応というバズポイントを抑えつつ、彼女の持つ年齢詐称ちょいエロ担当というキャラを存分に生かした少し時代錯誤な曲調が唯一無二のアイデンティティを示す。5年後には他者プロデュースでも名を成してそうです。こう言う台詞マシマシの遊び心溢れた曲、好き。

7. .SOU / AVTechNO! (19)

まさかの大好きな曲のセルフアレンジ。ひたすら独白を続けるような歌詞がサビの後にも続くリアレンジはバッチリ決まっていて、10数年後の回答とも思える。メタバースを目隠しで歩くかのような静謐な曲調の中、ひたすら自問自答を繰り返す思念の存在、初音ミク。まさかミクさんの声がここまで使われ続けるとは2007年時点では思ってなかった。録音した歌の癖をトレースするような調整ほぼ不要なボーカロイドも出る中、唯一無二の世界観を持つ初音ミクの独特の歌声に弾かれるプロデューサーはいなくならない。

6. 私は最強 / Ado (20)

いや本当にね、あなたは最強。と言う感じの2022年。ちょっと前からオクターブ上に跳躍する、喉に挑戦するようなフレーズが流行ってるんですが、この曲なんてまさにそれですね、わたしはさーい「きょー(オク上)」が出るか出ないかでカラオケで競い合う人類?よくわかりませんが、まあ当然Adoさんなら余裕でしょう。ミセスの独特の世界もバッチリ歌いこなしてもはや彼女に敵はないです。でも歌詞は、私は最強って「思いたい」という感じで、ちょっと切ないのもいいね。

6. まにまに / r-906 (20)

ボーカロイドが当たり前になって流石に尖ったプロデューサーも減ったな、と思ったらそんなことはなかったぜ、という感じの曲。クリスマスに出た「プシ」もそうですが、1分に切り取られ承認欲求を満たすだけのへたっぴダンスに使われていく曲たちへの皮肉と言わんばかりの長尺間奏と、それでいてなんだかんだキャッチーなサビ、というサービス精神のバランスがとても素敵。やっぱりオブラートに包んでみんなに聞いてもらいつつ、こっそりネチネチ刺してこそ上等なアイロニー。見習いたい。

4. 心眼 / Lanndo feat.須田景凪 (23)

もうひたすら曲調が好みで何度も聴いてしまう Lanndo ことぬゆりさんの「なるべく人に頼る」というコンセプトのアルバムより。洗練されたダンスビートにブリブリの電子ベースにカットアップ、なるべく人に頼っても消えないぬゆり印の曲調そのものって感じで最高でした。

3. 新時代 / Ado (45)

イントロを聴いてられない昨今の世代にアピールするアカペラ(そして最後の一音でやはりオク上に跳躍)で掴んでからいつもの耳に痛いぐらいコンプレッサーでぶっ潰したテクノビートで聴かせるヤスタカ調に移行していく職人芸。ヤスタカ氏健在ですね。歌詞も上手く、この曲にも随所に不穏なフレーズを散りばめ、映画を見終わる頃にはダークな曲にしか聞こえないのは見事な仕掛け。つまり

 邪魔者や嫌なものは全部消しちゃえ!
 世界を思い通りに変えちゃえ!

・・・ってことですよね。表では多様性とか言いながら、裏では子供が公園で騒ぐと市役所に文句を言って公園を閉鎖し、快適さの下に要らないものを削除して世界を思い通りにしていく。そんな殺伐とした時代が、新時代ってことなのかもしれない。

2. KICK BACK / 米津玄師 (49)

米津玄師×常田大希×チェンソーマン、と言うビッグコラボでありながらしっかり期待値を超えた曲を出してくるあたりが時代の寵児って感じですね。まず「努力!未来!A beautiful Star!」というモーニング娘。の明るいフレーズを思いっきり暗黒な感じにサンプリングするところが尖りまくってるのにそれに飽き足らず全編を通したざらついたボーカルプロダクションとがなり声を上手く使った歌唱。しーあわせになーりーたーいーらーくしていきーてーたーい、なんて言いつつもなんとなくノリで「努力」とか連呼してしまうあたりの信じられないほど薄っぺらさを持つデンジこそ、今の時代のヒーローだなあと思います。僕らは本当は尊い存在、という昭和的世界観に明確なNOの解答をし、薄っぺらい自分を受け入れ、ひろゆきを祭り上げて適当に世の中をハックして自分だけ助かろうとする令和の感性。まさにこの曲がテーマソングですね。
ささくれ立ってんな。

1. Celestial / Ed Sheeran (81)

そして唐突な洋楽が再生数1位(個人的にはいつものコト)。3日で世界で1000万本と、アホみたいに売れたポケモンSVの主題歌ですが、これは時代に合いつつも前向きな歌になっていて、KICK BACKと裏表で2022年を表現してるかのような曲だなあと思います。これもやはり歌詞がポイントで、

We were made to be nothin' more than this
生きていくために、それだけのために僕らは生まれた

和訳は公式動画の字幕による

と言うフレーズが後半のサビで印象的に繰り返される。

「生きていくために、それだけのために僕らは生まれた」という力強いフレーズはまさにこの時代だからこそ出てきたフレーズという感じがする。夢を願うためでも叶えるためでもなく、些細な日常に魔法を見つけ出そうよ、というメッセージは凋落していく世界の中で希望を見つけるためのヒントのようにも思える。最初に和訳付きで動画を見たときちょっと泣けた。

みんなで夢を叶えなくても、ゲームの向こうにいる電子データのポケモンやネットの向こうにいる配信者と、何気ない日常に少しの魔法を感じて生きていく。なんか、ほんと、切ないよな。

(Appendix Not 2023) Penguin’s Detour / 林田匠

今年の曲じゃないけれど、今年一番衝撃を受けたのはこの曲でした。全編、陰鬱で凄惨な歌詞はすべてのフレーズが鋭利な刃物のように心臓をザクザク削られるような痛みが。普通の曲はペンギンをモチーフにした場合「飛べない鳥だからこそ見えないものがある」というメッセージになると思うんですが、この曲の絶望はさらに深く

あるはずがなくなっていた ゆらり揺蕩ったまま
寄る辺なく縋っていたはずだったのに
思いを遡ってみたって思い出せないね
それが端からあったものなのかすら

飛べない鳥になっていた ふらり彷徨ったまま
空からじゃ見られない眺めがあるんだと
言葉へ落とし込んで最後 嘘に変わってもね
ただそれとなく伝わるものがあればいい

https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/40843.html

ぐらいまで踏み込んでいる。切実な思いは妄想かもと切り捨てられ、言葉は嘘に変わるかもしれない。「絶望と希望は紙一重というかもうほぼイコール」とは僕の好きなプロ奢らレヤーの言葉だが、この曲はそういう意味では本当の「希望」の曲なんだと思う。けれど、ここまで踏み込むのもそこまで疑うのも、僕にはまだ辛すぎる。

この超絶シリアスな世界観でいて、作者ご本人が「暗いだけにしたくなかった」と導入した軽快なリズムはとてもこの曲を聴きやすくしており散歩にも合うが、なんというかダンサーインザダークみたいな、明るさがあることがさらに暗さを増している感もあるよなと思ったりする。

歌は原曲の初音ミクさんか、Sekaiさんの儚く神経質な歌声のものが好きです。こんなとんでもない曲が、いろんな人によってたくさん歌われているというのもすごい状況だ。「曲に落とし込んで、嘘に変わって(格好つけた歌として消費されて)もね、ただそれとなく伝わるものがあればいい」なんて解釈は、少しこの曲に入れ込みすぎかもしれない。

2022年のまとめ

時代のムードにあった曲をたくさん選んだ気がします。多分僕は今が好きなんでしょうね、衣食住全部足りてて、娯楽は無限、家から出ないで仕事もできる時代なのに幸せになれないなんてSF小説みたい。

あとやはり、動画とセットでプロモーションされる今の時代に大事なのは歌詞ですね、どこまで世の中を見据えて、本質を歌詞にねじ込めるか。どんどん複雑化するメロディとアレンジ、短くなる時間。歌詞、拙作で私自身も本気で書いてみたけれど、少なくとも深夜3時に Penguin’s Detour 聴きながら散歩するぐらいには自分を追い込まないと書けなかったです。本当にしんどいですよね、何かを生み出すって。

去年はこちら
https://so-na.hatenablog.com/entry/2022/01/13/093755

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