【宇宙ビジネス最新動向解説】安全保障x民間企業が本格化!米国の宇宙市場へ、多額の資本投下の可能性【Space Symposium 2024:中編】
本記事では、2024年4月8-11日に米国コロラド州コロラドスプリングスで開催された世界最大級の衛星産業カンファレンスSpace Symposiumで発表されたニュースのうち、特に森が注目したトピックについて解説します。
中編にあたる本記事では、「ペンタゴン、米宇宙軍が戦略文書を公開」について詳しく説明します。
(前編はこちら、後編はこちらです。)
ペンタゴンによる「民間宇宙統合戦略」
Space Symposiumでは安全保障に関連するトピックも多く、その中でも特に「民間宇宙統合戦略(Commercial Space Integration Strategy)」に関する発表(*1,2)は、宇宙ビジネス業界に大きなインパクトを与える可能性があります。宇宙からの測位や、超音速ミサイルの監視、高いセキュリティでの通信など、宇宙を利用した技術の重要性は安全保障の面でも近年加速度的に増しています。特に、ロシアによるウクライナ侵攻により、戦闘において宇宙利用が非常に有用であることが、全世界に認識されるに至りました(*3)。そうした背景から、米国国防総省(ペンタゴン)の宇宙政策最高責任者である、ジョン・F・プラム国防次官補(宇宙政策担当)は、
と述べています。
(*1 【U.S. Department of Defence】 DoD Releases 2024 DoD Commercial Space Integration Strategy)
(*2 【U.S. Department of Defence】 Official Says Commercial Space Strategy Is Driven by Imperative to Maintain Warfighting Edge)
(*3 【WIRED】ウクライナ侵攻で存在感、宇宙の“目”となる人工衛星の価値と強まる懸念)
米国宇宙軍による「民間宇宙戦略」
他方、米国宇宙軍も同様に、宇宙軍と民間セクターの協力を推進する方針を示した、「民間宇宙戦略(Commercial Space Strategy)」を発表しています(*4)。宇宙軍宇宙作戦部長であるB・チャンス・サルツマン大将はSpace symposiumにて、
と述べており、米国と同盟国間の協力だけではなく、宇宙軍と民間企業の関係を強化することが重要であると述べています(*5)。
(*4 【USSF】USSF releases Commercial Space Strategy to increase competitive advantage)
(*5 【Space.com】US needs new space tech or it 'will lose,' Space Force chief says)
政府から民間への資本投下の可能性
こうした、安全保障をベースにした政府と民間の協力の裏には、米国宇宙開発庁(Space Development Agency:SDA)の影響が大きいと森は語ります。
SDAによる民間企業の利用の最たる例は、ワープスペースも取り組む光通信事業です。SDAは新設されたばかりの2020年に、初のプロジェクトとして大規模な軍事衛星のコンステレーションを用いて情報を地上に送ることを目指し、「国家防衛宇宙体系(NDSA*1:National Defense Space Architecture、現在のPWSA:Proliferated Warfighter Space Architecture)」構想を発表しました。そこで鍵となる技術こそ、宇宙空間での光通信技術です。光通信端末市場には巨額の予算が投入され、宇宙空間での光通信の実用化へ、一気にギアが上がりました(*6)。
今回発表された民間宇宙統合戦略や民間宇宙戦略でも同様に、安全保障に関する様々な宇宙分野に多額の資本が投下されることが予想されます。それによって宇宙関連の民間企業がどのように発展していくのか、今後も目が離せません。
(*6 【ワープスペース Note】【SmallSat Symposium 2023】安全保障だけではない光通信の需要とはー光通信が地球観測に革命を起こす新技術の鍵となる可能性ー)
(執筆:中澤淳一郎)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?