【宇宙ビジネス最新動向解説】SpaceX、Starshipの試験飛行に成功！！圧倒的な開発速度を支えるのは…政府機関！？【ワープスペースCSOが語る：SATELLITE 2024 前編】
2024年3月18-21日に、世界最大級の衛星産業カンファレンスSATELLITE 2024が今年もワシントンD.C.で開催されました。SATELLITEは衛星関連情報メディアであるVia Satelliteが主催する1981年から40年以上続く歴史があるカンファレンスで、例年4月に開催されるSpace Symposium、例年8月に開催されるSmallsat Conferenceと並び、米国の宇宙分野では3本の指に入るカンファレンスイベントです。SATELLITEには、世界各国の人工衛星、軍事・安全保障、投資、輸送、通信、メディア等の関係者が集まり、今年はホワイトハウスの国家宇宙会議商業宇宙政策局長Diane Howard氏、連邦通信委員会(FCC)委員長Jessica Rosenworcel氏などの面々が登壇しました。
このように世界中の事業者が注目する中、SATELLITE 2024では、数多くの重大な発表がなされました。また、ワープスペース・CSOの森は、パネルディスカッションにも登壇し、衛星間、衛星ー地上間光通信の重要性や利点、そして課題について議論しました。本記事では、カンファレンスで発表されたニュースのうち、特に森が注目したトピックである、
SpaceXのStarshipの試験成功
SpaceXが光通信端末販売開始
携帯ー衛星間の直接接続
についてお届けします。
（森が昨年参加した「SATELLITE 2023」のレポートはこちらです。）
前編では、「1．SpaceXのStarshipの試験成功」について詳しく説明します。
（中編はこちら、後編はこちらです。）
森は今回のカンファレンスで特に印象に残った登壇者として、SpaceXの社長兼COOである、グウェイン・ショットウェル氏の名前を挙げています。
ショットウェル氏について森は、
SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏と同様、このようなカンファレンスの場に姿を表すことが珍しく、「登壇する」だけで会場の注目を集めていた。
と語ります。
ショットウェル氏は、3月14日に行われたSpaceXが新規開発するロケット「スターシップ」の3回目の試験飛行について述べました(*1)。スターシップは地球低軌道に100-150トンの物体を地球低軌道に投入できるように設計されており、宇宙探査、有人宇宙飛行、商業宇宙ステーションなどの新たなビジネスを開拓する可能性が期待されています。
(*1 【Space.com】SpaceX fires up Starship rocket ahead of 4th test flight (video))
この発表により、パネルディスカッションでは、
スターシップは大型ロケットであるが、小型衛星打ち上げ用の小型ロケットと比較して単位質量あたりの打ち上げ価格が非常に低い。もしスターシップに小型衛星と軌道輸送機（Orbital Transfer Viechle：OTV）を搭載することで、Starshipを用いた小型衛星の打ち上げが達成されれば、小型衛星打ち上げロケットの市場は破壊されるかもしれない
といった意見(*2)も挙げられています。
(*2 【SPACENEWS】 Starship could have a big impact on small launch vehicles)
しかしその中でも森が最も驚いた点は、その開発スピードの速さであると語ります。ショットウェル氏によると、早ければ6週間後、すなわち5月初旬にも4回目のスターシップの試験飛行が実施されるようです。これに対して森は、
先日和歌山で失敗に終わってしまった、ベンチャー企業「スペースワン」による小型ロケット「カイロス」と比較しても、スターシップは1000倍ほど規模が大きい。それにも関わらず、このスピード感で飛行試験を行えるSpaceXのプロジェクトマネジメントにはやはり驚きを隠せない。しかし一方で、ロケットを打ち上げるためには、アメリカ連邦航空局（Federal Aviation Administration：FAA）による認可が必要だが、このような政府機関の対応のスピード感も日本とは大きく異なっている。
と、独自の見解を述べます。日本の場合はロケットの打ち上げには内閣府の許可が必要ですが、安全審査等も含めて、試験飛行計画の発表から6週間での打ち上げはやはり考えにくいと言います。SpaceXは宇宙分野にアジャイル開発を取り入れ、猛烈なスピードでプロジェクトを進展させる(*3)ことが知られていますが、SpaceXだけでなく、米国の政府機関も相応に「アジャイルな」対応を心得てきている様子が伺えます。
(*3 【UchuBiz】 野口聡一氏が「SpaceX凄い」と連呼する理由–「他が報告書を書いている間に次を打ち上げる」)
（執筆：中澤淳一郎）