元731部隊の堕胎医
「元赤線地帯にある堕胎専門病院を知っているか?」
早朝、知人からの連絡は、衝撃的な内容だった。周囲でも貴重な生き証人が毎年亡くなってゆくので、今話をしなければという思いに駆られたそうだ。
「赤線」とは、終戦後から売春防止法が全面施行された1958年(昭和33年)まで全国各地に存在した、女性が男性に遊興を提供した地域の俗称で、呼び名の由来は「警察が地図上の盛り場を赤線で囲んだから」など諸説あるが定かではない。他、戦後の日本女性の境遇は下記の記事に詳しい。
東京のとある住宅街を散策していると、重々しい雰囲気の診療所が目に飛び込んできた。そこはかろうじて病院とわかるが診療科目はなく、女性だけが出入りする。10代と思しき少女がいれば、派手または地味な女性、どう見ても高齢に見える女性などさまざまだ。その後、ここは堕胎専門だとわかるのだが、戦後、弱い立場の人たちに寄り添った医師のすべてとは言わないが、特に堕胎専門医になった人たちの中には、元731部隊に所属していたエリートが紛れていたと初めて耳にした。
元赤線地区にある病院は、今も堕胎を専門としていることがホームページに記されている。初代は昭和16年東大医学部卒、昭和25年開業とある。この空白の9年間に医師はどこで、何をしていたのだろうか。