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蟷螂(かまきり)
クライアントの社内。
通りのど真ん中に、彼は陣取っていた。
自慢の鎌を”クワッ、クワッ”とシャドーで繰り出しながら、
存在を誇示している。
その動きに、力強い生命力を感じた。
余りの気高さに、
気になって彼のことを調べてみた。
今は立派な身体でも、
3月頃はまだ卵の中。
4~5月孵化し、夏ごろに脱皮を繰り返して成虫になる。
秋にかけて交尾、産卵して次の世代へ命をつなげ、
寒くなる冬にはその殆どが、力尽きてしまう。
今年は気温が異常に温かいこともあり、
元気な姿を見せてくれていたのであろう。
暖冬とはいえ、その力強い彼に遭遇できたことはラッキーである。
後から思えば、その生命力が漲った体から、
神聖なる生きるパワーを、分け与えてもらった。
蟷螂は非常に食欲が旺盛である。
中には、メスがオスを食べてしまうことがあるらしい。
この事実だけを切り取れば、極めて残酷だが、
これもちゃんと種を残すためのプロセス。
なんと、オスを食べたメスからは、2倍の卵を産卵するというのだ。
孵化する確率を増やし、
遺伝子を次世代へ繋げる立派な手段なのである。
仮に、人類でこんなことがあったとしたら、
オスからしたら、たまったもんじゃない(笑)
ここで思った。
彼らはその短い一生の中で、目の前をそれこそ一生懸命に生きている。
蟷螂という種のサイクルを、絶やすがないように。
人間はどうだ。
頭が良すぎて、無駄に考えすぎて彷徨っていないか。
確かに他の生態系よりも
長生きする時間があって、選択肢が多すぎるってのもある。
ただ、
その豊かなメリットを、本当に「ありがたいこと」と思えているか?
その豊かなアドバンテージを、有効に使えているか?
(私筆頭に。)
「それが運命。」
そう言ってしまえば、話は早い。
しかし、
陰ながら懸命に自然を支えて、維持してくれている彼らに、
ふと申し訳なく思った次第である。
夕方、久しぶりの大雨が降った。
昼間、堂々たる振る舞いを見せてくれた彼を、ふと想った。
ご一読ありがとうございました。
今日も書けるという喜びに、感謝。