
明日へ向かう言葉 2025.2.12
人を不安にするものは、事柄そのものではなく、むしろそれに関する人の考えである。
カール・ヒルティ(文筆家、哲学者)
私たちは日々、様々な不安を抱えて生きている。
身近な仕事の締め切りや人間関係から、将来への漠然とした不安—。
しかしよく考えてみると、本当に苦しめているのは、事実そのものではなく、その事実に対する私たちの解釈や思考なのかもしれない。
例えば、締め切りの迫った仕事。
その日が近づいてくる不安に押し潰されになる時、実際に私たちを苦しめているのは何だろうか。
それは仕事自体よりも「間に合わないかもしれない」「失敗したらどうしよう」という、私たちの思考ではないだろうか。
忘れられない経験がある。
以前クライアントへの重要なプレゼンを前に、眠れない夜を過ごしたことがあった。
頭の中では、起こり得ることのない最悪のシナリオが展開され、不安は増幅するばかり。
しかし、実際のプレゼンはそこまで恐れるようなものではなく、むしろ準備の過程で感じた不安こそが、自分の心を最も消耗させていたのだ。
現実の出来事は、単なる出来事に過ぎない。
それを「脅威」や「危機」として捉えるのは、私たちの心が作り出した物語なのかもしれない。
但し、だからといって現実の困難や課題を直視しないことは不可能である。
そのために、自分の思考パターンを意識的に観察すること。
それが、不必要な不安から自由になれる可能性をこの名言は示唆している。
時として、立ち止まって自問してみることが大切である。
「今の不安は、事実に基づくものだろうか?それとも、私の思考が作り出した物語だろうか?」
この問いかけは、不安との新しい向き合い方を私たちに示してくれる。
結果的にできること。
それは目の前の現実に対し冷静に向き合い、そして、自分の思考自体が現実を歪めて捉えていないかを、時折確認してみることなのかもしれない。
そうすることで、「不要不急の不安」から少しずつ自由になれるのではないだろうか。