
明日へ向かう言葉 2025.2.25
一瞬だけ幸福になりたいのなら、復讐しなさい。
永遠に幸福になりたいのなら、許しなさい。
歌野晶午(小説家)
私たちの心の中には、時として怒りや憎しみ、悲しみが渦巻くことがある。
信じていたのに、裏切られた。
信頼していたのに、想定していなかった言葉に深く傷ついた。
誰かに深く傷つけられ、その痛みに耐えられなくなった時、復讐という選択肢が心をよぎることもある。
復讐は一時的な満足感を得られるかもしれない。
「やり返してやった」という達成感は、束の間の快感を味わうことができる。
でも、本質的な問題はそれで解決するだろうか。
もしかしたら、その後に新たな憎しみの連鎖が待っているかもしれない。
「許す」という選択。
一度振り上げた拳を降ろすということは、想像以上に困難なこと。
まだ傷ついた心が癒しきっていない。
どうしてもあの言葉が心に引っかかっている。
「許す」ということは決して、忘れることでない。
自分の中にある「怒り」「痛み」を認め、それを手放す勇気のこと。
人生の中で深く傷つけられた経験がある。
その瞬間は相手を許すことなど、想像もつかない。
しかし時間の流れは、気づきを与えてくれた。
実は許さないことで苦しんでいたのは、自分自身だったということに。
「許す」ということは、自分自身を解放するためにあるかもしれない。
それは決して相手のためだけではなく、自分の心の平安のため。
心の中に、誰かへの怒りや憎しみがあるのなら、それは人間としてごく自然なこと。決してその感情に支配されることなく、少しずつでも「許す」という選択肢をもつこと。
それは必ずしも「今」できないことかもしれない。
しかし、心がその準備をして自分を解放できた時から、相手と違う関係性が見えてくる可能性がある。
「許す」という選択。
それは心が少しずつ、確実に軽くなっていく。それは、自分自身への最高の贈り物になるのかもしれない。