意味が分かると怖い(?)話~シャンプー~。
とあるドラッグストアにて、私はおかしなものを見つけた。
「恐怖の劇薬、キレイキレイ」
キレイキレイといえば、あの、もはやどこにでも置いてあると言っても過言ではない、有名なハンドソープである。
キッチンに一つはありそうな、あのハンドソープだ。
しかし、私が見つけたのは、そのキレキレイではなかった。
それは、シャンプーのコーナーに、一つだけ置いてあった。
女もののシャンプーコーナーを見ていたら、そこにキレイキレイがあった。
ボディソープではなく、あたかも他のシャンプーにカモフラージュしたかのような、それっぽい青色の袋に入っていた。
手に取り、触ってみると、どうやら液体の様である。
容量はおよそ1Lといったところか。
私は値札を見た。
値札は関係のない商品のもので、この商品の値段は書いてなかった。
私はキレイキレイを手に取り、どこかに値段が書いていないかを探した。
見えたのは、バーコードの上の『安売り』の赤い文字。
書いてある数字は、1.000円だった。
……1.000円。
普通のシャンプーにしては、ちょっと高めである。
しかし、私は無性に、この得体のしれない劇薬を買いたいと感じていた。
だって、キレイキレイのシャンプー、しかも女ものだよ?
こんな馬鹿馬鹿しいもの、買うしかない。
ちょうど、シャンプーは切らしている。
私はキレイキレイをカゴにいれた。
キレイキレイはカゴの底に落ち、トッと音をたてた。
***
当初の想定以上に長く買い物をしてしまい、家に帰ったのはそれから数時間後だった。
コロナ禍なので、帰宅後すぐに手を洗う。
念入りに二度手洗いをすると、ボディソープがあんまり泡を吹かなくなった。
使い切ったのだろう。
でも、替えのボディソープは今さっき買ったところだ。
買ってきた日用品や食料などを片付けつつ、私はルンルン気分だ。
あのあと、欲しかったテレビが安売りされていて、
思わず散財──衝動買いともいう──してしまったが、満足だった。
唯一不満な部分があるとすれば、やはりキレイキレイか。
レジ袋の底にいれたシャンプーを取り出し、ため息をついた。
見れば見るほど、馬鹿馬鹿しかった。
こんなものが1.000円もして、自分がそれを買ってしまったということが今は虚しかった。
衝動買いというヤツだろう。
にしても、なんでこんなものに……
「考えていても仕方がない」。ため息一つつき、私は片づけを続行した。
でも、買ったからには、使わなければならない。
私は風呂場にて、自嘲の笑みを浮かべた。
何が馬鹿馬鹿しいって、私が詰め替え用の「キレイキレイ」を買ってしまったことである。
無論初めて買ったのだから専用ボトルは持っていないし、
前使っていた別のシャンプーのボトルも捨ててしまった。
さて、どうするか。
私は考えた。
風呂場を見渡すと、白いプラスチック製の棚の上に、ボディソープのボトルやリンスなどがおいてあった。
でも、全部中身が入っていた。
中身が入っていなければ、シャンプー用として代用もできるのだが。
そこまで考えて、私は良案を思いついた。
そういえば、台所に空になったボディーソープのボトルがあった。
アレを使おう。
一応、『キレイキレイ』だし。
私は冷たい空気を全身に感じながら、
キッチンへ向かった。
さっき継ぎ足していなかったので、
そこにはまだ、空っぽのボトルが置いてあった。
裸で寒いので、私は動きを早くする。
ボトルとキレイキレイの両方のフタを開け、キレイキレイを持ち上げた。
慎重に傾けると、パッケージと同じ、白色の液体がでてきた。時間が経つのごとに、キレイキレイが軽くなる。
全て継ぎ足し終わったあと、私は深々とため息をついた。
その瞬間、あることに気が付いて、私は小さな悲鳴を上げた。
冷たい風が吹き、思わずくしゃみがでた。
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