
2025年のテーマについて
「真理は客観的なデータによって確立されるのではなく、それを真理とする認識論的パラダイムが逆にデータを見出させるのである」
トーマス・クーン
昨年(2024年)の元旦に、「今年は〈存在論的(オントロジカル)〉ショックの年になるだろう」と書いた。
2023年7月のアメリカ議会の公聴会でのデビッド・グルーシュらによる衝撃的な証言を見て、2024年にはUAPやNHIについて大幅な情報公開(ディスクロージャー)が進むだろうとの予測からそのように書いたのだが、実際には、いくつかの進展はあったものの、全面的なディスクロージャーにはまだまだ遠いと感じさせる一年だった。
しかし、年末にかけて、主にアメリカ東部のニュージャージー州を中心とした大量の「ドローン」出現があり、目撃者が続出するに及んで、地元の州政府のみならず連邦政府も対応(というより無対応)を強いられる騒ぎになった。この騒ぎはまだ続いている。アメリカだけでなく全世界的にUAPの目撃が多発していて、今後も予断を許さない。
このような異常な事態が発生し続けているにもかかわらず、主要メディアの動きは鈍い、と言わざるを得ない。そして人々の関心もそれほど高くはないように思える。これにはやはり数十年かけて築き上げられてきた「UFOタブー」の大きさを感じる。
このことについて、「UFOタブー」は主に社会的構造(情報統制)の問題でもあるが、同時に人間の認知機能そのものに備わる問題でもあるのではないか、と思うようになってきた。
個人的に2024年はインゴ・スワン「リアル・ストーリー」の翻訳紹介を通じて、彼に学ぶところが多かった一年だった。
インゴは一貫して「超能力者」と呼ばれることを嫌い、「超能力」は特殊な人間だけに備わった能力ではなく、人類という種に普遍的に内在する「バイオマインド」の能力であると主張していた。
彼は超能力の実践者であると同時に、卓越した理論家でもあった。ハロルド・パソフと共同して「リモートビューイング」の開発方法を考案し、一つの体系的なシステムにまとめあげた。
彼が主に取り組んだのは、どうやって超能力を開発するか、ということよりも、「なぜ人間は(本来備わっているはずの)超能力を発揮できないのか」という問題であった。
先ほど述べた人間の認知機能に備わる問題について、インゴはダーウィンの「ビーグル号航海記」を引用しながら興味深い例を挙げている。
ダーウィンの一行はビーグル号で南米の海岸に到達し、現地人に迎えられた。現地人はダーウィンたちが上陸するために使ったボートを見て、こんな小さなボートでどうやって太平洋を渡ったのか、と驚嘆して彼らを崇めた。
ダーウィンは彼らに、自分たちはボートで海を渡ったのではなく、巨大な軍艦に乗って来たのだ、と話し、海に浮かぶビーグル号を見るように仕向けた。
しかし今度はダーウィンが驚いたことに、現地人たちはビーグル号を認識できなかったのである。彼らにはしばらくの間、文字通りビーグル号が「見えなかった」というのだ。
この事例からインゴ・スワンは、人間の心には「情報処理グリッド」と彼が呼ぶものが内蔵されていて、グリッドで捉えられない事物は存在しないものとして処理される(スルーされる)のだと説明する。
これを今の「ドローン現象」にあてはめると、同じことが起こっているのが分かる。人間は、すでに自分が把握し理解している枠組みでしか物事を捉えられない。たとえば夜空に飛ぶUAPを「ドローン」としてしか捉えられないのがそれである。
参照系を持たないものを何らかの現実と認めることには多少の不快さがあり、頭を混乱させる衝撃でもあるため、人々はそもそもショックを受けるのを避ける傾向がある。確実性は不確実性よりもはるかに好ましいとされる。
また人の「認識パラメータ」の範囲という問題もある。誰もが特定の社会文化的環境要因のもとに生まれる。その要因には、その範囲内で特徴づけられ役に立つ基本的な参照系が含まれているだけでなく、人が認識すべきものの限界も設定されている。個人はそれらの要因に刻印され、ある時期(通常は思春期)に、「成熟」と呼ばれるプロセスを経て、他の参照系や認識パラメータを締め出すことになる。
そして、認識パラメータは通常、大多数の人々の間で最も共有しやすい最低共通分母に沿ってフォーマットされる。その後、共通分母と一致しないことを経験しても、共通分母の想定された確実性を「脅かす」傾向があるため、異常または悪いものと見なされる。そのためほとんどの人は自分とは異なるか、自分の認識パラメータを逸脱する事象の妥当性を検討しようとしない。
逆に言えば、「情報処理グリッド」と「参照系」を変えることで、それまで未知だった認知機能が働きだすことも可能だということになる。インゴ・スワンの「リモートビューイング開発法」はこの理論に依拠している。
今年は、インゴ・スワンの書き残した解説やメソッドを参考に、こうしたテーマに取り組んでみたいと思っている。
同時に、彼の有名な「月面リモートビューイング」をはじめとした「不思議な話(ストレンジ・ストーリー)」も紹介する。
もちろんUAP関連の動きも随時追っていく。最近のUAP現象の多発は、「彼ら」の側がこちら側の遅々としたディスクロージャーの動きに業を煮やしているのではないか、とも思わせるほどである。
このnoteは、多くの読者に読まれることを想定していない。UAPやNHIや人間のバイオマインドについて真剣な関心を持つ少数の人たちに向けて、自分のノートを公開するような形でこれからも書いていく。
同じような志を持つ方々の参考になれば幸いである。