和レゲエ数珠繋ぎ-第61回-ケイタ
関西フォーク周辺において、和レゲエの流れを後押したであろうイベント・春一番が1度目の終わりを迎えたのが1979年の5月。この翌月、和レゲエ観点での重要アルバムが2枚リリースされています。この周辺時期が和レゲエのシーンにおいて1つの転機のように思いまして、今回はその鍵を握る合計4枚のアルバムを紹介します。キーマンは坂本龍一。
1枚目は、1979年6月21日にリリースされた坂本龍一&カクトウギセッションのアルバム『サマーナーヴス』、ほぼ全編レゲエで構成された名盤。レコード会社からのボサノバというお題に対して逆にレゲエを提案したそう。収録曲の「TIME TRIP」は、2022年にSlowly名義にてカバーが7インチでリリースされています。
2枚目は、4日後の6月25日に発売された渡辺香津美のアルバム『KYLYN』。こちらはタイトル曲の「KYLYN」が、フュージョンテイストの和レゲエ。参加メンバーも似た顔ぶれ、坂本龍一と渡辺香津美を中心に様々なセッションが行われていた時期らしい。加藤和彦の『パパ・ヘミングウェイ』もこの年の10月のリリースです。その辺りの背景は、レコードが聴ける家さんのこの記事に詳しくあるので読んでみてください。出会いが山下洋輔の前座というのが、当企画的には阿部登がチラついてありがたい流れ。
そして翌年、上述の2枚があったからこそリリースされた音源があります。
それはPECKERの『PECKER POWER』と『インスタント・ラスタ』の2枚。KYLYNのPart2のようなイメージで企画されたそう。元々は坂本龍一が啖呵切って始まったようですが、YMOが忙しくなりすぎて…。その辺りの詳細はこちらの記事を読んでください。
オリジナルの主要メンバーに加えて、Sly & RobbieやAugustus Pablo、wailersにi threesも参加とえらいことに。同時期にジャマイカで製作され「KYLYN」のダブバージョンも収録されています。
他にもここから派生した作品や、坂本龍一、ペッカーといったキーワードで探すと多数の和レゲエが見つかります。
FLATTさんが、提示してくれた3方面の1つである「加藤和彦や坂本龍一の〜…」という流れは、この辺りの音源やメンバーがターニングポイントになっているのではないでしょうか。PECKERの2作品については当時、早すぎて評価されなかったようですが…1978年頃からYMOも始動し色んな面で国外から影響を強く受け始めた時期なのかもしれません。
※3方面については当企画の50回を参照ください。
この年代になってくると、前回まで取り上げていたフォークロックレゲエとは少し違った趣きを感じます。リスナーとして前者には、どこか「歌謡曲」といったイメージを少なからず抱いていました。しかしPECKERの作品に顕著に出ているよう本格的にレゲエを追求するシーンがこの頃から現れます。勿論それ以前でも追求していたとは思いますが…。
そしてPECKERより数ヶ月早くジャマイカでレゲエ作りに挑んだ日本人がいます。これまでにも何度か名前を挙げているフォークシンガーの豊田勇造です。名盤『血を超えて愛し合えたら』のライナーでは、1979年に坂本龍一が関わったテレサ野田の和レゲエについても言及しています。本気で追いかけていれば当然のことと思いますが、良し悪しの判断は今となっては難しい部分。
教授レゲエはキリがないくらい多いのですが、酢豆腐さんの月刊和レゲエvol.2に詳しくあるのでオススメです。教授絡みの和レゲエ話題は、すでに情報がネットにあり、ここまでに出てきたリンクが参考になります。そのため私が触れるまでもないのですが、大事な転機であるとして新年1発目の更新に選ばせていただきました。残り39回。
今週もありがとうございました!