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「模倣の先に成功はない」。真似できない会社と組織を創るトリドールの挑戦~「丸亀製麺」の攻めを守る トリドールのバックオフィスのありかた~

皆さま、こんにちは!WARC広報担当です。

今回は、株式会社トリドールホールディングス 執行役員の鳶本さんと、弊社代表の山本・コンサルタント 河上との対談インタビューを実施しました。

トリドール社はどのようにしてここまでのスピード成長を遂げてきたのか、成長を支え続けるコーポレート部門での取り組み、世界外食トップブランドを目指すためには今何が必要なのか、などについて語っていただきました。

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#プロフィール

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鳶本 真章
株式会社トリドールホールディングス 執行役員 CHRO 経営戦略本部 本部長
株式会社TDインベストメント 代表取締役

大学卒業後、大手自動車メーカーに入社。マーケティング領域に従事した後、京都大学大学院でのMBA取得を経て、大手外資系コンサルティングファームへ。多様な経営戦略案件にコンサルタントとして携わった後、大手日系建材メーカーで社内コンサルティング部門を担当。その後、複数のベンチャー企業での経営支援を経て2018年にトリドール入社。以来、グループ全体の組織・人事戦略をリード。2019年より、執行役員CHRO 兼 経営戦略本部長に就任。人材の採用・育成を通じたグループの成長にコミットしている。

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山本 彰彦
株式会社WARC 代表取締役社長 Co-Founder

Ernst & Young、KPMGを経て、2012年にイグニス 取締役CFOに就任。コーポレート部門の立ち上げや全社的な組織構築に従事し、2014年に東証マザーズ上場。上場後は引き続きコーポレート部門の統括、及び国内外のIR戦略、ファイナンス戦略を牽引する傍ら、複数事業の立ち上げを経験。2017年にWARC設立、代表取締役に就任。公認会計士。

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河上 修一郎
株式会社WARC Co-WARC事業部

KPMGあずさ監査法人 国際部、中小税理士法人を経て、有限責任監査法人トーマツにてリスクアドバイザリー業務に従事。 2018年にWARC入社、経理支援・財務支援業務にプロジェクトマネージャーとして従事。公認会計士・税理士。

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売上1,000億の東証一部上場企業。入社したら「どベンチャー」だった

山本:鳶本様はプロフィールにある通り、様々な企業でマーケティングやコンサルタントを経験されていますが、株式会社トリドールホールディングス(以下 トリドール)に入社したきっかけを教えて下さい。

鳶本:一環してポリシーにしていたのが「経営を支えるプロフェショナル人材」です。前職のコンサルタント時代に次のステージを考えていた際、「人の生活を支える『衣食住』のうち『衣・住』に関わってきたので、次は『食』に関わることで業界を変えたい」と考えるようになりました。

そんな時「NewsPicks」に掲載されたトリドールの記事をたまたま見かけました。「2025年度までに世界6,000店舗、店舗合計売上5,000億円を達成する」と書いてあるんですね。目を見はりましたよ。2018年当時の店舗数が約1,000で売上高が1,000億円ほど。経営コンサルタントの常識から考えると、桁違いの数値目標です。

その一方、トリドールについて開示されている情報を調べていくと、経営者と社員が本気で目標達成しようとしていることと、それを裏打ちするデータが見えてくることに気づきました。「経営者がこれだけ高い目標を掲げ、社員がその達成を信じて働いているからこそ、経営戦略や組織戦略で役に立てることがあるはず」と思い、採用ページの応募フォームから問い合わせをしました。

山本:一般応募だったんですね。リファラルで入社されたのかと思っていました。

鳶本:よく人からそう思われるのですが一般応募です(笑)。創業社長の粟田や社員の方々と話をする中で、あり得ない目標に向かいながら楽しそうに仕事の話をする表情や、粟田が描く経営ビジョンに共感し、2018年10月に入社を決めました。私に求められるミッションは「グループ全体の組織・人事戦略」です。

トリドールは2018年当時、通期売上高1,000億円の東証一部上場企業でしたが、入社前から「うちはベンチャーっぽいですよ」と聞かされていたので、企業カルチャーをある程度把握していたつもりでした。

ところが入社してみると「この会社は、どベンチャーだ!」と驚きました。とにかく意思決定と実行スピードが速く、社員一人ひとりの裁量権が大きい。

「グループ全体の組織・人事戦略」というミッションに対して、それを推進するための組織戦略を粟田に提案すると、その場で決議されてプロジェクトが始まる。こんなことの連続です。

山本:それは速いですね。どういう基準で意思決定しているのでしょうか。

鳶本:粟田が大切にしているのは「その人に任せる根拠」です。仕事に対して本人がどれだけ当事者意識をもって真剣に考えているかを見ています。

結局、誰かに渡された仕事を、いかに失敗せずに、前例に則って処理するだけでは大きな成果につながらないんですよね。これは一緒に仕事をさせていただいているWARCさんも体験していると思いますが。

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「丸亀製麺」の攻めを守る トリドールのバックオフィスのありかた

山本:丸亀製麺」を始めとする各ブランドや海外事業の経営戦略に対して、それを推進していくための組織をグランドデザインするなかで、どんな戦略を描いていますか?

鳶本:日本は少子高齢化により人口減少が加速度的に進んでいます。一方、食の文化や好みは多様化しています。加えて、新型コロナウイルスの影響で外食産業のありかたも大きく変わらざるを得ない状況です。つまり、外食企業が今までと同じやり方で右肩上がりの成長をすることは、今後はあり得ないでしょう。

だからこそ「どんなことをしたらお客様に喜ばれるか?」という「新しい価値創造」を真剣に考える社員を育てていく必要があります。

例えば世界で1,000店舗以上を展開している「丸亀製麺」。お客様に愛される理由は「全ての店舗で粉から製麺し、常に茹でたての麺を提供する」というコンセプトです。これが「おいしい!」とお客様に喜ばれている。

その反面、店舗経営やオペレーションの最適化という点では、外食チェーン店の多くが採用する「セントラルキッチン」を導入するほうが合理的でしょう。「店内製麺」というコンセプトによる負荷は、バックオフィスにも影響しますからね。

河上:新規店舗にかかる投資金額やオープン後の運営コストも増えますし、バックオフィスの管理が増えるのは間違いないですね。

鳶本:効率という点でセントラルキッチンは外食チェーン店の経営セオリーでしょう。しかし丸亀製麺を食べてくれるお客様が喜ぶのは「セントラルキッチンで効率化された丸亀製麺」ではない。

河上:丸亀製麺にとって店内製麺が攻めの姿勢なんですよね。だからこそコーポレート部門は「攻めを守る組織」である必要があると感じます。そのためには、時流や状況にあわせて柔軟に対応できるコーポレート部門が求められます。御社はそのための意思決定と実行が速いのが強みですよね。

世界外食トップブランドを目指すために

山本:日本の人口減少に伴い食の需要が縮小する状況下で「2025年に世界6,000店、世界外食トップブランドを目指す」ためには何が必要でしょうか。

鳶本:丸亀製麺クラスの事業の柱を何本もつくる必要があります。現在展開している「グローバル・マルチブランド戦略」もその一環です。

例えば「売上高1,000億円の事業を創る」として、同規模である丸亀製麺クラスの事業を1つ創るよりも、売上高100億円クラスの事業を10個創ろうと考えています。

山本:売上高100億クラスの事業を創るためには何が必要でしょうか。

鳶本:組織戦略の先にあるのは「事業を産む人」を育てることです。丸亀製麺のコンセプトである「お客様に喜ばれる食事」は、一店の繁盛店がもたらす感動であり、その繁盛店は「お客様に感動を与えられる従業員の手」によって生み出されるからです。我々はその繁盛店を生み出せる事業をつくるために、人材育成こそが大切だと考えています。

新型コロナウイルスの影響で外食業界は大きな打撃を受けました。現場を見ていて実感するのは、やはり当事者意識や起業家精神の高いオーナーは強いということ。どんな状況であっても、ひたむきにお客様に向き合っているオーナーに、人材育成のヒントがあると思っています。

山本:やはり人が重要ですね。

鳶本:今「食 × 新規事業」のビジネスプランコンテストを企画しています。事業アイデアはもちろんのこと、提案してくる社員の熱意や当事者意識に期待しています。

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組織も人も常にアップデートされる組織であるために

河上:御社に携わるなかで実感するのは「課題解決のために当事者意識をもつのが当たり前のカルチャー」です。それはコーポレート部門のメンバーでも感じます。例えば、決算に影響するような課題を見つけたとして、普通なら青ざめてしまうようなケースでも、御社のメンバーは目を輝かせて議論して、解決策を模索していますよね。

鳶本:冒頭でも話したとおり、人口が減少する国内市場においては、昨日と同じやり方では成長が望めない時代です。ただ、日々の仕事に追われていると、その危機感を実感しづらいんですよね。人は「昨日と同じやり方」を本質的に望みますし、コンフォートゾーンに留まることは本質的に楽なんですよ。そしてそこから出るのは怖かったりもする。でも一度、コンフォートゾーンを飛び出してみれば、目の前にあるのは自分で課題を見つけて意思決定できる世界なんですよ。

我々は2025年度に世界6,000店、世界外食トップブランドを目指しています。それは、国内の飲食企業が到達したことのないステージ、つまり未知の世界なんです。未知の世界に向かって走っているので、常に人も組織もアップデートされているべき。当然、コーポレート部門のメンバーもそうです。

山本:人も組織も常にアップデートされるために、大切にしていることはなんですか?

鳶本:2019年にトリドールの経営理念がブラッシュアップされ、“Finding New Value. Simply For Your Pleasure.”となりました。「すべては、お客様のよろこびのために。」という想いが込められています。

山本:経営ビジョンに対する社員の働き方や評価制度などはどう定義していますか?

鳶本:前提として「何事にも情熱を持って取り組める」をベースに、5つの行動指針として「TORIDOLLER's Value」を定義しています。

それらを実現できる人が、トリドール社員としてあるべき人材像と定義し「パフォーマンスとバリューの2軸」で人事制度を刷新しました。

山本:ミッションや行動指針をメンバーに浸透させるために工夫していることはありますか?

鳶本:ひたすらメンバーに喋っています(笑)。とにかく自分の口で喋り、伝えることが大切だと思います。

山本:私も経営しているので共感します。「あれ?この話、今日で何回目だろう」って思うことありますよね。

鳶本:人によって言い方変えるとかね。「また言ってるよ」って思われてると思いますが、それくらい言ったほうがいい。その人がわかってくれれば、部下や同僚に同じように喋ってくれる。組織のカルチャーは、そうやって人から人に伝わることで形成されていくと思っています。

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「模倣の先に成功はない」。真似できない会社と組織を創る

山本:コーポレート部門で求められる人物像とはなんでしょうか?

鳶本:「どうすればできるのか?」を考えられる人材です。

河上:御社では、セオリーで動くよりも、ビジョンに対して考えられる人材が強いですよね。コーポレート部門というとセオリーで動きがちですが、御社のメンバーはプロジェクティブでプロアクティブに考えながら動いていると感じます。

鳶本:人生、チャレンジしてるほうが楽しいんですよ。人から言われたやらされ仕事ってモチベーション上がりませんよね。主体的にチャレンジしている仕事なら、ピンチの時にもチャンスの時にも、モチベーション高く機動的に動けるはず。

実は「朝令暮改」って言葉が私は好きで。一見するとネガティブな言葉に聞こえますが、朝決まったことが日暮れに変わるということは、つまり会社がその日のうちに変化対応している証拠なんですよね。朝令暮改どころか朝令朝改ですら丁度良いくらい(笑)。

河上:その高い目標を本気で達成できると思っている社員が多いですよね。我々WARCのメンバーもそのビジョンに共感しながら、一緒にお仕事をさせていただいています。

鳶本:「国内の飲食企業が到達したことのない未知のステージ」と言いましたが、先例がないので自分たちが作るしかないんですよ。世界外食のトップブランドを目指すとはそういうことなんです。

よく「モデルケースにしている会社はありますか?」と聞かれるのですが、ありません。同じ方向性を向いているので、やり方が似ている会社はあるかもしれませんが。我々は、模倣の先に成功はないと思っていて、どれだけ先駆者になれるかを重視しています。

山本:御社の「2025年度に世界6,000店、世界外食トップブランドを目指す会社創る」という目標がそれを表していますよね。

2兆円規模の売上を支えるコーポレート部門を今からつくる

山本:トリドールの財務経理に携わるなかで、トリドールの今後の成長のために、どんな課題を見据えてどんなことで協力していきたいと考えていますか?

河上:先程の「経営理念」と「行動指針」を具体的に体現しているのが、丸亀製麺の店舗製麺をコンセプトにした1,000店舗近くの大規模展開だと感じます。

その一方、課題もあります。セントラルキッチンを持たないことによる店舗経営の煩雑化。新規店舗立ち上げに関わる初期費用と投資回収。本社側でのバックオフィスの負担。我々はそこをお手伝いしていますが、ホールディングス全体の売上規模拡大を見据えたバックオフィスのありかたは常日頃、議論しています。

鳶本:まさに議論していますよね。我々は2025年度に6,000店舗という数字目標を掲げていますが、それも一つの通過点だと思っています。世界外食のトップブランドになるためには売上高1兆円2兆円を目指さないといけない。

当然、丸亀製麺だけでは1兆円2兆円にはならない。「グローバル・マルチブランド戦略」を掲げているように、新しい価値を生む業態やブランドを育てる必要がある。

トリドールが丸亀製麺だけの会社で、現在1,500億の売上を1,600億にするなら、経営管理のありかたは今のままでも成長は望めます。しかし、1兆円2兆円を目指すなら、その規模に見合ったコーポレート部門の体制が必要です。WARCさんと一緒にやっているのは、1兆円2兆円企業を支えるコーポレート部門の構築です。

河上:10倍の売上規模を目指すとなると、業務の効率化は避けて通れないですよね。その一方、トリドールが大切にしてきて、かつお客様から評価されているサービスのありかたもあります。セントラルキッチンを持たずに「店舗製麺」が代表的な例です。

鳶本:飲食店の特性上、店舗があれば売上は立ちますよね。1店舗1億の売上が2,000店舗あれば2,000億になります。その一方、数を増やせばコーポレート部門への負荷が増えていきます。店舗独自に製麺しているならなおさら。WARCさんと一緒にやっているのが、トリドールの強さを前面に出したまま、いかにコーポレート部門を固めていくかです。

河上:店舗数が倍になったり、丸亀製麺クラスの事業が複数育ったり、国内を超える売上規模の事業が海外に展開できた時なども見据える必要があります。我々もそれに耐えうるコーポレート部門のありかたを模索し、議論させていただいています。

鳶本:まさにホールディングスとしての強さをコーポレート部門に作りたいと思っています。経営が管理するために現場を変えるのではなく、現場とお客様のために何ができるのかを常に考えられるようなコーポレート部門にしたいですね。

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世界外食トップブランドを達成した時のトリドール

山本:「世界外食トップブランド」となるには1兆円2兆円の売上規模を目指したいとのこと。その目標を達成した時どんな会社になっていたいですか?

鳶本:日本で一番入社したい会社にしたいです。世界中から優秀な人材が集まり、業界を一変させているはずです。そうなれば、飲食業界は現在のような「キツイ、ツライ」というイメージではなく、意識が高く生産性の高い、憧れの業界になっていると思います。

ただ、そうなったとしても、基本にあるのは「お客様に喜んでもらうために、何ができるか」を常に考え続ける人や組織です。トリドールがどんな規模になったとしても組織も人もアップデートし続けないといけない。

河上:お客様目線だからこそのバックオフィスの効率化や、現場の負担軽減。それをどうやって改善するかを一緒に考えたいですね。

お客様のためにはアンチパターンであっても良いと思っています。丸亀製麺にセントラルキッチンを導入しないのも、ある意味外食チェーンのアンチパターンかもしれない。でもそれがトリドールの「攻めの姿勢」であるなら、コーポレート部門は「攻めを守る組織」でありたいですね。

鳶本:アンチパターンで勝ちに行くってキツイんですよね(笑)。でもトリドールならではのゴールデンパスがどこかにあるはず。

河上:一緒に探しましょう。

鳶本:まぁ見つかったとしても、きっと変えちゃうんだろうけど(笑)。

河上:わかります(笑)。今日見つけた正解を、明日になったら捨ててしまって、次の課題解決を探るのがトリドールの強さですよね。

鳶本:どベンチャーですからね(笑)。

山本:世界外食トップブランドなのに、会社のカルチャーがどベンチャーだったら本当に面白いですね。心から応援したいです。WARCとしても、引き続きコミットさせてください。

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