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やっぱり書きたい、映画「RPWP」
RMさんのセカンドアルバム「Right Place,Wrong Person」の制作過程を追った記録映画「Right People,Wrong Place」が公開されました。
もうすぐ完全体を迎えるBTSに期待する上でも見ておきたかったし、何より発信力が抜群の人なので、彼の言葉には自分ごととして考えさせられる力がある。日本でも公開されて嬉しかったです。
このnoteにも多くの方が記事を投稿されています。
記事数が多くてさすがに全部は拝読できなかったのですが、本当に興味深かったです。何かを書き残したくなる映画ですよね。
「良かったです!」ってシンプルに語っていらっしゃる方もいれば、長文で思いの丈を語っている方もおられる。どれを拝読しても「ですよね」ってなりました。
私、2回見ました。1回目は自分の中で消化しきれない状態。まず登場人物が多い。予備知識なしで見たので「この人は誰?どういう立場の人?」という疑問が頭の中を駆け巡り、その疑問が解消されないままインタビューを聞くことになる。RMさんやTeam RMの活動風景を見ながらも、自分がどこに連れて行かれるのか、何を思えばいいのか予想がつかなかったんだと思います。
パンフレットを読めばある程度は解決したのかもしれませんが、それは何か違う気がしました。映画は映画で完結してほしいという思いがあるので。
で、2回目。
大体の流れは1回目で把握していたのでひとつひとつのシーンに意味を見出そうと身構えることはやめ、淡々と映像に身を委ねることにしました。そしたら、もしやそれがイ・ジョンソク監督のメッセージなのか?と思うぐらい印象に残ったのが、RMさんの穏やかな表情や笑顔です。「BTSのRM」を一旦リセットして、RMでもありながらキム・ナムジュンでもある自分を心ゆくまで味わっている姿に「考えなくていい、感じろ」って言われてるような。その結果、癒されました。2回目で。
この映画はシンプルだけど、深掘りするときりがない作品だと思います。RMさんとの距離感の違いで色々な感想を持つことができる。RMさんのことをよく知っている人なら彼のこれまでの人生やキャラクターに思いを馳せるだろうし、よく知らない人が見ても、ひとりの青年の日々に自分の生き方を重ね合わせることができる。
イ監督も撮影前に大体の構想は練っていたと思います。でも敢えて無理にまとめようとしなかったというか、RMさんが持つ複雑さをそのまま形にしたというか。
この映画の骨格は、どう見てもクリエイティブ・ディレクターであるサンヤンさんへのインタビューですよね。そしてその骨格への肉付けとして、関わったスタッフの方々のインタビューが重ねられて、RMさんの人物像が浮かび上がってきます。けれど、主人公であるRMさんの言葉自体は「分かりましたけど、それで?」みたいな感じであちこちに散りばめられている印象なんですね。唐突に「何を言い出すんだ」的な。
映画のストーリーはRMさん以外の人が組み立てて、RMさん自身はその中で遊んでるというか、遊ばせてるというか、そういった構成になっているのが面白かったです。
RMさんは「自分に正直でありたい」と言ってて、この映画もその道筋を描いています。けれど実際のRMさんの無意識は意外と手強くて、その日その日で色々な「自分」を使い分けていたんじゃないかと思うんですね。イ監督はそこを上手く拾い上げてる感じがしました。
例えばBTSフェスタでのRMさん。皆さまの記事で「あそこは異質な感じだった」って書かれてる方がおられたんですけど、私もすごく印象に残ったシーンでした。JKさんからの電話で、ファンは「あ、ジョングク」ってすぐに分かるのに、RMさんだけが分からないんですよね。
「BTSのRM」として登場しているのに、中身は「RPWPのRM」っていう感じがすごく出てる。無意識に正直な自分を曝け出しているRMさんが上手く捉えられてるなと思いました。
で、終盤になるとド正直なRMさんが登場します。これはもう意識的に正直なRMさん。SUGAさんのコンサートで、まだタイトルも決まってないのに「COME BACK TO ME」を歌っちゃうという。入隊を控えた最後のライブ。愛を伝えるのはこことばかりに。
と、ここまで書いてきて思い起こせば、断片的に出て来るRMさんの言葉も時系列に沿ってるのかも知れない気がしてきました。ただしご本人は「BTSのRM」と「ソロアーティストのRM」と「キム・ナムジュン」を行ったり来たりしてたと思うので、イ監督による再構成かもしれませんが。
最初は結構ネガティブじゃなかったですか?
「最近のK-POPは無難だよね」とか「内に籠って守りに入ってる気がして嫌だ」とか。
それが徐々に「僕は嫌いな人が多いけど、良いところも見つけられる」とか「愛してるけど嫌い」とか。
唐突に言うので「だから?」と思ってしまったんですけど、ポジティブorネガティブ、どちらともとれる言葉ですよね。
で、終盤では「楽しかった」「楽しかった」「楽しかった」の連続。
(記憶を辿っているので頭の中で再構成している可能性があります。間違ってたらごめんなさい)
そういった映像の流れに身を委ねていると、RMさん自身もまだまだ葛藤してたんだなということが想像できるし、イ監督もそういったRMさんに忍耐強くつきあってる。
サンヤンさんが
「最初はRMさんをコントロールすることが彼にとっての近道だと思ってたけど、今はどこへ行こうとも彼に寄り添っていくことにした」
というようなことを語っていましたが、これはイ監督の気持ちでもあると思います。
サンヤンさんやイ監督は本能的に「出来るだけコントロールしたい、全てを手の内に入れておきたい」っていうポジションにいる人です。作品に対して最終的に責任を持つ人なので。だから上手くやりたかったんだけど、第2章に向けたRMさんのスクラップ&ビルドは2人の思惑を遥かに超えていた。好青年だと思ってたら騙されたんですね。
「こんな僕につき合わせてごめん。だけどまだまだしんどくて」
「いいよ、いいよ。もう腹くくったから、ゆっくりやりな」
っていう会話はなかったと思いますが、入隊というタイムリミットがあったので最終的に整えていくのは本当に大変だったと思います。そこは皆さんやっぱりプロですよね。
映画の最後にRMさんは「僕は恵まれている、こんなプロジェクトを企画してもらって」ってしきりに感謝の言葉を述べていました。
「いやいやいや、あなたはそれだけのことをして来たし。会社には莫大な利益を、国には多額の納税と国威発揚で貢献してきたやん」と心の中で突っ込んでましたが、確かに30歳のひとりの青年の「自分探し」に、これだけのスタッフと制作費用をかけることは、まあないです。そういった意味で「僕は恵まれている」と素直に感謝できるRMさんの普通さは尊いと思うし、だからこそ当たり前に兵役にも行ったんですね。
いま彼は否応なしに普通の青年としての日常を過ごしています。大変だろうけど帰還後はまた少し違ったRMさんになっている筈で、その視点からこの映画をどう再評価するかも楽しみだし、その行為自体がまた彼自身にとって意味のあることになると思います。
本当に素敵な映画でした。2回見て良かった。関わったすべての方にお礼を言いたいです。
最後までお読み下さった方は本当にありがとうございました。