「WHITE ALBUM 2」聖地巡礼: クリスマスのストラスブール訪問記
皆さんは『WHITE ALBUM 2』をご存知でしょうか?(このnoteの読者でこの作品を知らない人はまさかいないと思いますが……)
『WHITE ALBUM 2』は2010年に発売した伝説的なエロゲです。三角関係をテーマにし、美しい音楽とシンプルな文章で彩られる冬の恋物語は多くのプレイヤーの心を揺さぶり、ときにトラウマを刻み付けていきました。雪が降るとき、この作品を思い出すエロゲーマーは多いでしょう。
本作のグランドルートでは、主人公の北原春希とヒロインの一人である冬馬かずさがクリスマスイブのストラスブールにおいて運命的な再会をするという印象的なシーンがあります。そのためストラスブールは『WHITE ALBUM 2』の重要な聖地のひとつとなっています。
アニメの聖地巡礼もといアニメツーリズムはかなり一般化してきましたが、やはり海外となるとハードルは高いです。しかし『WHITE ALBUM 2』に魅了されたファンたちにとって、日本-フランスの距離などは些末なことであり、多くの巡礼者がストラスブールを訪れていきました。
私も先人たちの軌跡を見て、いつかはクリスマスにストラスブールを訪問したいと考えていたのですが、運が良いことに昨年のクリスマスに急に予定が空き、ついに2022年12月23日から12月25日にかけて聖地巡礼を行うことができました。
気がついたら5か月ぐらい経ってしまっていますが、今更ながら訪問記を残してしておきます。
聖地巡礼
ストラスブール駅 (Gare de Strasbourg-Ville)
かずさが春希を見つけるのがストラスブール駅です。
この駅はガラス張りのファサードの内側に歴史ある建物が入れ子になっているという面白い構造になっています。中にある建物ができたのが19世紀で、その後2007年にファサードが完成したという経緯のようです。
クレベール広場 (Place Kléber)
駅で偶然春希を見かけたかずさがボロボロになりながら春樹を追い、ついに春樹とかずさが出会う場所です。
背景の建物はAubetteという歴史的建造物です。今はスタバなどが入っているショッピングモールになっているようです。銅像は広場の名前にもなっているクレベール将軍です。
雪菜と待ち合わせしている際の背景CGにも映っていたクリスマスツリーもありました。このクリスマスツリーは30mぐらいありかなり迫力があります。実物はCGよりも迫力を感じます。
このツリー、あまりにデカいので、昔から生えている木に装飾しているのかと思っていたんですが、実は毎年アルザスの山から切って持ってきているみたいです。
クリスマスツリーは時間になると音楽が鳴ってイルミネーションショーが始まります。クリスマス当日には若者が集まって歌ったりしていました。
オルフェヴェール通り(Rue des Orfèvres)
タイトル画面になっているやつです。左のガチョウの飾りが目印になります。大聖堂から近いのですが、クリスマス時期は人でごった返しているので見つけるのが大変でした。
左側に映っているガチョウの飾りの店がBoutique Du Gourmet - Georges BRUCK Foies Gras d'Alsaceというレストランなので、そこを目印にするとよいでしょう。
アドルフ・セイブ通り(R. Adolphe Seyboth)
位置的にはアドルフ・セイブ通り(R. Adolphe Seyboth)と バン=オープラント通り(Rue du Bain-aux-Plantes)の間に位置する場所です(Google Map)。Crêperie Bol d'Airというクレープ屋さんが目印になるかもしれません。
ゲーム内ではストラスブールの一背景という形で使われていました。
ここの近辺でアジア系っぽい若者が必死に写真を撮っていたのですが、同志だったんでしょうか。声をかけずに終わってしまいました。
バン=オープラント通り(Rue du Bain-aux-Plantes)
先ほどの曲がり角の道に沿って進んでいくと、PS3版のパッケージ画像の場所につきます。(Google Map)。左側に映っているLohkäs Restaurant de Traditionというレストランが目印になります。
ここら辺の地域はプティットフランス(Petite France)などとも呼ばれているようです。木組みの家と石畳が非常に美しく、観光客が写真を盛んにとっていました。
ホテル リージェント コンタード (Hôtel Régent Contades)
ホテルの方は正直モデルになっているかどうかは良く分からない感じでした。まず入り口が地下になっていますし、窓の形とかも特に似ていないです。
せっかくなので泊まりました。
4つ星なので部屋は流石にきれいでしたが、建物が古いため、都心に建った築10年以内のアパホテルとかの方が高級感を感じる人がいるかもしれません。
直前の予約で、しかもクリスマス時期だったため、宿泊料は一泊3万円ほどかかりました。私はヨーロッパの人々がクリスマス時期には家で過ごすため、観光はオフシーズンだと考えていましたが、そうではないようです。他のグレードが低いホテルでも一泊2万円程度は必要でした。ですので、クリスマス時期に旅行する際には、事前に計画を立てて適切な時期に予約をする必要があると思われます。Expediaなどの宿泊予約サイトのセールやクーポンを利用すれば、多少は費用を抑えることができるでしょう。
ノートルダム大聖堂
作中では言及はされるものの登場しなかったですが、ストラスブールを象徴する建物としてはノートルダム大聖堂を挙げる人が多いでしょう。
ノートルダム大聖堂というと、パリに位置する最近燃えた大聖堂を想像しがちですが、ノートルダムは「フランス語で「私達の貴婦人」という意味で、聖母マリアを指」すらしく(Wikipedia)、ノートルダム大聖堂と呼ばれる大聖堂は複数存在し、ストラスブールにも存在します。
ストラスブールのノートルダム大聖堂は高さ142mとかなり大きいです。なんと1874年までは世界一の高さの建造物だったらしく、とにかく迫力があります。特にバラ窓はライトアップされていると非常に印象的です。建築には300年を要したようです。
内部も巨大なタペストリーや彫刻ステンドグラスで彩られており見ごたえがあります。礼拝を行っていることもあり、静かに見る必要がありますが、観光客は普通に騒いでいるので、たまに「シーッ🤫」という注意がスピーカーから流れます。因みに天文時計が有名らしいのですが、存在を忘れていてちゃんと見れませんでした。また行かなければならない。
因みに、クリスマスイブの日中には大聖堂には入れませんでした。(朝のうちぐらいは入れたのかもしれませんが、)ミサをやっているタイミングなら入れますが、じっくり見学したい人は、注意。
登る
大聖堂ですが5ユーロぐらい払うと展望台に登ることができます。23日の訪問時は既に締め切られていたのでクリスマスイブのお昼に登りました。クリスマスイブということもあってか、一時間ぐらい並ぶ必要がありました。登っていくと大聖堂の地上から良く見れない部分が観察できたりします。
クリスマスミサ
作中ではかずさと出会ったために、春希君が参加しそびれた会です。
特に事前の手続きとかはなく、23時から入れます。正面のゲートは開いておらずから正面右側の扉から入ります。入る時はセキュリティチェックがありました。開始時間については、HPや大聖堂内のモニターなどに情報が出ているのでそれを参考にしましょう。始まった直後はかなり混んでいるので、時間ちょうどぐらいに行かないと座れないかもしれません。(最初の方は後ろで立ち見している人がいました)
クリスマスミサに参加するのは地味に初めてでした。終始葬式並みの厳かな雰囲気かと思っていましたが、そこまででもなく、振り香炉を持った聖職者が入退場する時にはスマホを構えて動画を撮ろうとしたりする人もいたりもしました。ある程度観光イベント化されているというところでしょうか。式の最中は喜捨を求める人が回ってくるのでいくらか渡した方が良いでしょう。ところどころで起立を求められたりします。あと男性は室内脱帽です。教会訪問のマナーみたいなものを守っていれば特に問題はなさそうです。
大聖堂内は暖房とかもないのでとにかく寒いです。最後まで参加したい場合は防寒対策はかなりしっかりしていった方が良いです。
式の進行みたいなものを書いた紙をもらい損ねて、寒さもあって式中は辛かったですが、クライマックスに『きよしこの夜』を歌い、散会と共にパイプオルガンの厳かな音が響くなか正面ドアが開け放たれて、イルミネーションが灯る街へと人々が帰っていくという光景は神秘的でした。この壮麗な光景が500年近く前から存在していた事実にはヨーロッパ文明に対する畏怖を感じざるを得ません。
春希君もかずさに出会わなければこのミサに参加して、良い感じのムードでプロポーズできていただろうに……
その他の観光
食事
24日の夜は基本的にレストランは基本的に休みで、24日の午前はコルマールを訪問していたので、ストラスブールでまともな食事をとったのは23日の夜のみでした。大聖堂前のレストラン『メゾンカメルツェル(Maison Kammerzell)』というところが運よく当日予約できたので訪問しました。何軒か別のところは断られたので、この時期で何かしっかりとした食事をしたいのなら、予約はしていった方が良いです。
建物は15世紀ぐらいにできたものらしく、伝統を感じさせます。
ググったら出てきた、アルザス名物、シュペッツレ(Spätzle)と、フォアグラを食べました。フランス料理屋のことをイマイチ理解していなかったのですが、とりあえず前菜とメインの二品ぐらいを頼むというのが多いらしいです。パンもついてきました。フランスといえばワインな気がしましたが、地元のビールを勧められたのでビールを飲みました。安くはないですが量はかなりあるので満足感はあります。
イル川クルーズ
ボートに乗るのが定番のアクティビティらしいので一応乗っておきました。ストラスブールの歴史について聞きながら、屋根付きのボートで川を下っていくといった内容です。ルートとしては大聖堂前の発着場を出てEUの本会議場あたりまで行って、戻ってくるという航路です。途中水上エレベーターがあります。音声ガイド付きで、フランスとドイツの国境に位置し戦争が絶えないながらもそれを乗り越えEUの本会議場がおかれるに至るといった歴史の解説を聞くことができます。アルザス人の弾圧や同化政策の話が興味深かったです。
乗った時間が悪く(17時ぐらい)序盤は夕暮れ時ということもあってなかなかいい雰囲気だったんですが。最後の方は暗くて何も見えませんでした。街並みをしっかりと観察したい人はもう少し早い時間に乗ることをお勧めします。
イル川クルーズはクリスマス当日でもやっているアクティビティなので、クリスマス時期に訪問して観光に困ったら体験してみるのも良いでしょう。
Tips
市内の交通
ストラスブール市内の移動にはトラムが便利です。15分ぐらいの間隔では運航しているイメージで、2ユーロぐらいで乗れます。切符は自販機で買い、トラムに乗る前に駅のタッチするスポットみたいなところでタッチをするという仕組みでした。
切符の種類としては一回使いきりの券や一日券があったりします。一日券は厳密に24時間有効なので、前の日の昼に買ったものが次の日の朝にも使えたりします。
駅においてある自販機の一部はタッチパネルではなく、ダイヤルみたいなのを回す日本ではあまり見ないインターフェースになっていて初見では混乱させられました。二、三台を回ってどれもタッチパネルが反応しない!とスマホが常識でタッチできないパネルを理解できない子供みたいなムーブをしてしまいました。(タッチパネル式のものも駅によっては存在します)
切符の買い方が不安な方はは以下のサイトを参考にするとよいでしょう。
乗り方に関してはGoogle Mapを信じれば問題ないです。トラムの行先ごとに色みたいなものが決まっているので、グーグルマップと照らし合わせて適切なものを選びましょう。大体ダイヤから5~10分ぐらい遅れてやってくる感じでした。
なおクリスマス(12/25)はお休みの店が多いですが、トラムは普通に動いていました。
終わりに
ストラスブールのクリスマスはそもそも有名なこともあって、非常に見ごたえがありました。普通に観光地として『WHITE ALBUM2』を知らない人にも強くお勧めできます。
今回の巡礼ですが、本来は2年ぐらい前に行くことを考えていたのですが、コロナ禍もあって今回の日程での訪問になってしまいました。
以前は渡航の自由が当たり前だと思っていましたが、この2、3年でそれが実はもろいものであることを痛感しました。現在も、ヨーロッパへ行く際にはロシア上空を迂回する必要が生じており、これが航空運賃の上昇につながっています。
そもそも聖地自体改築でなくなってしまうこともあります。現に吉祥寺は大幅な改築に伴って、聖地感がなくなってしまっています。
行きたいと思っている方は早めに訪問したほうが良いかもしれません。
おまけ:ごちうさタウン
ストラスブール自体は割と小さく見るところもそこまで多くはない(?)気もしたので、クリスマスイブの午前は「ごちうさタウン」ことコルマール(Colmar)に行っていました。ストラスブールから電車で30分ほどで行くことができます。ただし電車の本数は少ないので注意。
ストラスブールにも木組みの家はありますが、こちらはさらにカラフルになっていて非常に「可愛い街」になっています。各家の色はもともとは各家の宗派を反映していたらしいです。
『ハウルの動く城』『美女と野獣』などでモデルになっているという噂のプフィスタの家も訪問しました。両方とも見た記憶がおぼろげであまり感動がありませんでした…
ストラスブール訪問の際は、ついでに訪問すると良いでしょう。
先行研究
訪問に当たっては先人たちの足跡が非常に参考になりました。
あとから気づいたんですが、便利な地図を作ってくれている方がいました。事前に気づきたかった。
後で検索して気づきましたが、中国のファンの活動が活発です。baiduで検索したり、bilibiliで検索したりすると色々な活動を見ることができます。
全く同じ時期に来ている中国のファンもいましたね。
ストラスブールのサッカーチームが中国ファンを取り込むために『WHITE ALBUM2』のパロディを宣伝に使ったという話があるらしい。
(※ゲーム内の画像はすべて『WHITE ALBUM2』から使用しています。使用に当たってはアクアプラスゲームプレイ映像配信ガイドラインに基づいて収益化をしない前提で使用しています。)