2021年7月の俳句。
膨らます 芝生の海と 夏の雲
知人がコロナで外出がままならぬこの夏 六歳の孫娘のためにビニールのミニプールを連日ふくらませているとのこと。
本当は海に連れて行きたいんだけどね と彼女は話していた。
明けやすし 昼と夜との 汽水域
汽水域とは河口知覚や 海に繋がっている湖沼などに見られる現象。
真水と塩分を含んだ海水が混じりあって独特の環境を見せている 水域をいう。
明けやすしは 夏は夜が短く 暑さで寝苦しいのでたちまち朝になってしまう様をいう。
朝日が出る以前に空は白々と明るくなり始めてくる。
朝とも夜ともいいがたい時間帯がしばらく続く。
廃校の 鉄棒にシャツ 青田風
海開き ひっそりと開け どっと来る
張り詰める プール開きの水の蒼
今年の御宿町はコロナの中 海開きをすることになった。
近隣の市町村では今年も海開きを見送るところも少なくなかったが。
この判断はおおむね歓迎されているように思う。
昨年は海開きをしなかったがそれでも海には人が押し寄せて来た。
どうせ来るのであればきちんと管理する方がよいのではと考える。
しかし例年とは異なり 早朝の花火の打ち上げもなく 静かな海開きであった。
それでも人は列を作り、車は数少なくなった駐車場を探して周辺を回っていた。
そこだけがそっと明るく夏の浜
選手らの ホテルが二つ 青岬
知り合いのギターコンサートを見に 車で四十分ほど北にある 一の宮町に行ってきた。
ここは五輪のサーフィンの会場となっている所だ。
会場周辺はカラフルな店や建物が並び、以前は早しで薄暗かったところがそこだけ明るく光を讃えていたのは夏の日差しのせいばかりではなさそうだ。
ただそれは五輪の前夜とも思われないひっそりとした 静かな明るさだった。
濡らさずに トルコ桔梗の 白き傘
トルコ桔梗の釣鐘状の傘を思わせる白い花が咲いた。
それは庭ではなく 応接間の南の窓の傍に置いて育てたものだった。
ツルバキア 今年も咲いたか 風来坊
ツルバキアはニラによく似た草の間から50cmほどの細い花茎を数本伸ばしてその先にピンクや白や紫の花を着ける多年草である。
その細い花茎が風にゆらゆら揺れているところがなんとも脱力して自由な感じで 私は風来坊と呼んでいる。
熟してく 青肉メロン といふ地球
フルーツの果実というものが 宇宙の惑星にどこか似かよっているというのは単なる偶然なのだろうか。
あるいは必然なのだろうか。
宇宙樹の銀河系の幹から出た太陽系という小枝の先に地球という名の青肉メロンが成っていた。
時折通りすがりの宇宙人たちが 車を止めて 青肉メロンを見ている。
シリウス星人は 温室の管理人のように 害虫が着いていないことを確認して微笑すると通り過ぎていく。
またオリオン星人の一人は車から降りると 青肉メロンを手に取っって考えている。
まだメロンの底がかたいからも少し待った方がよさそうだと残念そうな顔をして車に戻って行った。
あなたはもう青肉メロンを食べましたか。