2022年5月の俳句。
浜の子の 裸足恥ずかし 子供の日
今年のゴールデンウイークは久しぶりに 海にも人が出た。
浜辺に幼い女の子を連れた親子連れ、父親はゴムゾウリを履いて やる気満々、お母さんの方は 波の来ない安全地帯に立って二人を眺めている。
お父さんは幼い娘に 靴を脱いで 裸足になるように促すが、ためらっている。
それでもお父さんの熱意に負けたのか、ついに靴を脱いで お父さんと二人で 波打ち際の方に歩き始めた。
湾丸し 立夏の波と 黄昏る
※千葉県 御宿町の 砂浜にて
立夏は二十氏節季の一つで 新暦 五月五日ごろに当たる。
都会から海辺にせよ 山にせよ 自然の中に入ると 最初は自分がその風景の中の異分子のように感じられることがある。
それが一日 その自然の場で過ごしていると、いつの間にか、自分がその風景の中に溶け込んでいることを発見する。
そんな時に風景の全体像が 見えてくる。
線路といふ 獣道あり 夏のつき
踏切に 親子の狸 子蟷螂
東京に生息している 野生動物たちは 人間の作り出したものを 巧みに利用して生きている。
鴉が 針金のハンガーを 巣作りに 巧みに 利用しているのは 有名な話。
鉄道もまた危険なゾーンではあるが、逆に言えば 人が簡単に近づいては来ない場所であり、狸たちの生活道路になっているようだ。
蝦夷鹿の 一頭ばかり 流氷に
薄氷を 割って大鹿 這い上がる
※早春の北海道 風蓮湖より
遠雷や 盤上の馬 駆け巡る
窓の外では 遠く 雷が鳴っている。
部屋の中では 将棋盤を挟んで二人の棋士が鎬を削っている。
盤上の馬 すなわち桂馬はいよいよ走り出す
桂馬は 将棋の駒の一つ。一つ間をへだてて、ななめ前方の左右へ飛ぶことができ、退くことはできない。敵陣の三段め以内にはいると、金と同じ働きをもつ。
水玉の 縞馬たちが 夏来たる
これは感覚の句である。
水玉模様は 涼しげな印象から 夏を感じさせてくれる。
水玉のデザインの食器も身近にある。
そんな時縞馬の中に縞の代わりに 水玉模様の縞馬が現れ、日本のサバンナを群れを成して走っていたら どうだろうと想像してみた。
花栗の 匂いも淡し 風の朝
花栗とは 栗の花のこと、栗はブナ化の落葉高木で山野に自生し 人家や畑でも栽培される。五月から六月の梅雨の時期に欠けて二週間ほど咲く。
栗の花には雌花と雄花がありクリーム色の花がたくさん咲き 離れて見るとそれが一つの枝のように見えてくる。
また更に遠くからみても緑の中に白いクリーム色の花がさいているのでとても目立つ。
青臭い 独特の匂いがある。すぐそばにあると いい匂いとは言えないが、遠くから風に乗って漂ってくると 淡く感じられる。
この星の 纏う大気や 薄衣うすごろも
薄衣は 夏の季語 薄く 軽やかに 織った織物
この地球を包んでいる 大気は 意外にも 宇宙から 見ると薄いものだと聞いたことがある。