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「神は細部に宿る」⇒ なぜ、『野田レーザーの逆算』を終わらせてしまうのか?



野田レーザーを終わらせるとは何事だ!?

 (# ゚Д゚) 



という心境の筆者でしたが、どうやら同じ気持ちの方が多く、Twitterでもトレンド入りしてましたね。

2021年10月からテレビ朝日が設けた深夜のバラエティゾーンの中にあった『野田レーザーの逆算』。定期的にそのゾーン内にある番組で一番面白いヤツを決める「バラバラ大選挙」も先月結果発表されました。1位は3時のヒロインの福田、ラランドのサーヤ、Aマッソの加納がメインを務める『トゲアリトゲナシトゲトゲ』。1位より下の順位は特に公表されていないので、野田レーザーが実際にどれだけ支持されていたかは定かではありませんが、数というより「好きな人は根強く好き」って傾向にあった気がします。間違いなく、野田レーザーはこのバラバラ大作戦内でも異彩を放っていた番組でした。当然、バラバラ大選挙は野田レーザーに投票しました。

ちなみに筆者が毎週欠かさず見ていたのは野田レーザーと『イワクラと吉住の番組』のみ。野田レーザーを見始めたのは正直途中(第10回辺り)からだったけど、イワクラ吉住の方は第1回から全部見てるので、愛着度で言ったらコッチの方が強い。コッチは継続の模様なので、よかったです。仮にイワクラ吉住も野田レーザーと同時期に終了していたら憤慨して二度とバラバラ大作戦を見ないところでした。

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(残ってくれたよかったです)

ちなみに野田レーザーと同時期(9月)に終了となる番組は『もう中学生のおグッズ!』『凪咲とザコシ』『空気階段の空気観察』

なんか、エッジが効いていて、ファンからの支持が根強そうな番組ばかりがふるい落とされてしまった様な気がし・・・。



しかし!



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なんと野田レーザーが『持ち寄り謎Q殿』と番組タイトルを変え、早めの時間帯に繰り上げて殴り込んでいました!番組内容的にも野田レーザーでの旨味を基に出来た特番っぽいです。つまりは、「野田レーザーのこの方向性、良いじゃん!もっと早い時間帯で、もっと大きな規模で挑戦してみる価値があるんじゃないか!?」とテレ朝側も思ってくれたのでしょうか。そう考えるとわりかしポジティブな終了だったのかもしれません。(『持ち寄り謎Q殿』は先日の9/24に放送済)

※『持ち寄り謎Q殿』はTVerで10月8日(土)まで見逃し配信見れます!


しかし同時にネガティブな面もあります。いやっむしろネガティブの方が大きいのが正直なところ。というのも「深夜に画期的で面白かったバラエティ番組が昇格してゴールデン~プライムタイムで始まると、番組内容が薄味でつまらなくなり、結果短命で終わる」といった最悪ルートに頻繁に導かれるからです。持ち上げといてそのまま天に召された番組がいくつあった事か。特にテレビ朝日フジテレビはこの傾向にあり、数々の良質な深夜番組を昇天させてきたイメージがある。


過去に『野田レーザーの逆算』と似た雰囲気の番組がありました。筆者は当時、その番組が大好きで深夜時代の第1回放送から追っていました。そして案の定、好評でゴールデン帯に昇格した途端、消えてなくなりました。その番組とは『世界は言葉でできている』です。2011~2012年にかけてフジテレビで放送されていました。

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世界の偉人・有名人達が遺した名言の一部分を空欄にし、その部分をゲストタレント達が”空欄のワードを考案し、元の名言を越える事を目指す”、といった内容でした。アカデミックだけど、勉学的な知識などがなくても楽しむ事が出来、(一応)答えはあるけれど、その答えを越えていく事に真髄がある様は野田レーザーと重なります。

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そして、キャスティングチョイスも秀逸でした。まだギリギリ「じゃない方芸人」の枠に収まっていたオードリー若林がこの番組では大活躍。IPPONグランプリにおけるバカリズム的な立場として絶対王者の風格を纏っていた若様。バナナマン設楽、有吉、板尾創路、ピース又吉などの言葉のスペシャリスト達がひしめく中、頭一つ抜き出た活躍をしていた若様には興奮したものです。この番組きっかけで若様に「クリエイター」「ブレーン」のイメージがテレビ業界内で根付き、じゃない方からの脱却とMCポジションへのシフトが起きた様な気がします。

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また、今や教養系番組の顔になっている林修も当時は「今でしょ」で話題になった直後でレギュラーどころか、テレビ番組に殆ど出演した事がなかった時期にこの番組で何度かキャスティングされています。ちなみにこの番組内での林修は長文回答ばかり出したり、上手く言おうとし過ぎた傾向にあったせいかポイントをあまり稼げず、おスベリ&イジられキャラ的なポジションでした。今そのままこの番組を再開して林修に答えさせたら反応はまるで違うでしょうね。

この番組も最初は深夜1時頃から始まり、アカデミックだけど大喜利的であり、前衛的でスタイリッシュな演出が際立った深夜の良質な30分番組でした。好評でゴールデン帯に昇格し、1時間の枠拡大で放送し始める事になったのですが、ゴールデンタイムでの放送回数はたったの5回という短命さで終了。その後深夜に戻って粛々、という展開もなく一瞬で消えてなくなったのでした。この頃のフジテレビには呆れてものが言えない。野田レーザーはどうか同じ轍を踏まないでほしい。



今後は『持ち寄り謎Q殿』をレギュラー番組としてやっていく事を前提とするなら、やはり「ゴールデン~プライムタイム帯で1時間尺放送」という形を目指していく事になると思います。筆者もTVerの見逃し配信で『持ち寄り謎Q殿』を視聴しました。野田レーザーの考察&逆算要素はこの番組のクイズにしっかりと盛り込まれていました。そういう意味では趣旨はしっかりと受け継がれていたし、クイズも趣向を凝らしてあったので面白かったです。

ただ、筆者がどうしても野田レーザーを終わらしてほしくなかった本文は、どちらかというと、その番組の趣旨とは関係のない要素が大好きだったからです。『野田レーザーの逆算』には沢山の遊び心が散りばめられていました。例えば、

・クイズ間の謎インサート

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(「サカナクション / 忘れられないの」に乗せて流れた映像)

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(「尾崎豊 / Forget-me-not」に乗せて流れた映像)

おそらくリアルタイムでの放送ならCM空けの時、次のクイズへと移行する合図としてインサート映像が流れていたのですが、どの映像もシュールで訳の分からないものばかり。それに乗せての選曲もキャッチ―な歌詞のものが多く、その絶妙なミスマッチぶりが何とも不思議な気持ちにさせてくれました。


・ミュージックセンス

選曲センスの秀逸さは、この番組を前衛的でスタイリッシュなオーラで包み込みました。特に番組のメインミュージックとも言える”OOIOO”というバンドの「OOIAH」という曲は異国情緒&センセーショナルなスパイスとして「野田レーザーの異彩感」を演出してくれていました。

上記のミスマッチ選曲も含め、改めて番組の音選びというものは非常に大事だと実感します。

それと、この番組をきっかけに「OOIOO」というバンドの存在を知りましたが、こういった今まで自分が触れてこなかった未知の領域を自然に摂取出来る機会は本当に貴重です。やっぱり人って自分の好きなジャンル、興味がある分野以外自ら知りに行こうとしないですよね。そうなると偏った情報と凝り固まった思考になってしまう危険性があると思います。

その点、テレビ番組というは雑多で沢山の情報が盛り込まれているメディアなので、とても大事な存在だと思ってます。筆者も正直、ここ数年は殆どテレビは点けていません。テレビ番組は基本TVerで見逃し配信形式で興味のある分野(お笑い)の興味あるタレント(好きな芸人)が出演している番組しか見ていませんが、野田レーザーの様な番組と出会うと、凝り固まってしまった思考や情報に新たなモノが流れ込み、血行が良くなるので、終わってほしくなかった。こういった番組は深夜ゴールデンなど時間帯を問わずもっと全体的に増えていくべきです。

音楽に疎い筆者ですが、こういった音楽に出会い、新鮮な気持ちになりました。これこそテレビ番組の醍醐味だと思います。

「なんか、どこかで聞いた事ある曲調だな・・・」と思い、「OOIOO」のウィキを訪ねると、かるじゃがのCMに起用されてました。あのCM、当時は病みつきになっていたので、こういった形でまた巡り合わせが出来て感動しました。最近、こういった独創性で勝負するCMも減っちゃったねぇ・・・

『野田レーザーの逆算』と同じく、こういった音選びの拘りが番組を彩ったケースで『モヤモヤさまぁ~ず』『中井正広のブラックバラエティ』が思い浮かびます。2つとも筆者の大好きな番組。音楽だけじゃなく、ナレーションやテロップもクセだらけ。

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・キャスティングチョイス

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あとはなんと言ってもコレ。何なんですか、このキャスティング。ガチ過ぎるだろ。筆者が野田レーザーを見始めたキッカケでもあります。Twitterで流れてきた野田レーザーのサムネ画像が目に入り「こんなメンツ揃えてるなら、見ないわけにはいかない」と思い見始めました。

キャスティングチョイスに関してはそれなりに番組の趣旨と関係しています。このお笑い強者達をキャスティングするという事は「大喜利、大歓迎です」と言ってる様なもの。しっかりと捻ってきた問題を出すけれど、大喜利で遊びの部分も設ける2段構えな構成は見事でした。メインMCの野田クリスタルとカズレーザーもこのガチメンツがゲストなら大喜利もしやすいでしょうし。『世界は言葉でできている』にも通ずる要素ですが、キャスティングにも拘りと意図を感じられる番組は総じて良い番組です。ネームバリューじゃなくて、本当にこの番組に合うであろう人をチョイスしてます。




この記事のタイトルにも「神は細部に宿る」と書いてありますが、今回野田レーザーを通して一番伝えたかったのは、

番組の本筋ではない箇所にも工夫を凝らし、

遊び心を注入する事はとても大事!


という事です。

スポンサーなり芸能事務所なりBPOの影響で色々と制約がある中で毎週放送をしなければならない、というムチャぶりな条件。細部にまで気を巡らす事はとても大変な事でしょうが、是非テレビ業界の方はその細部を蔑ろにせず、なんならイタズラする様な気持ちでこれからもガンガン遊び心を盛り込んでほしい。

イチ視聴者としてわがままな要望を書かせていただきました。


『野田レーザーの逆算』を制作して頂いたスタッフの方、とても面白い番組でした。お疲れ様でした。




どうやらTELSA(テラサ)というテレビ朝日のサブスクで過去に放送した野田レーザーが全部(?)見れるっぽいので、気になった方は是非。

※サブスクだと上記のインサート映像や音楽は権利の都合上、使用されていない可能性があります。







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