この街の向こうのその向こう【18の話】生きる選択

疲れているんだ。

何に疲れているのか、何だかいろいろグチャグチャで雪美にもわからなかった。

(まあ、全部かな…)

「フッ………」小さくため息をつき、立ち上がった。

(なんか飲もう)

いつも時間はあるようでなかったから、
いざこんな風になんの目的も次の予定もない時間に浸ると、どうしたものか、と考えてしまうんだな…
と、思考だけがとめどなく物を思う。

このまま死のうとすれば、
すぐ誰かに見つかることもないだろうが
死にたいという感覚が今は湧いてこなかった。

『死』の感覚はいつもすぐ側にあって、
それでいて手が届かないほど遠くにあるようだった。

(よくわからないけど…)

カウンターでシェイクを受け取り、
席に向かいながら雪美は考えを巡らせる。

あの街を出たことは、これまで考えたことのなかった生きる、という選択をしたのかもしれない、と。

それでも、確かなことなんて何もなくて、
あと3時間後には、
もしかしたらこの世にいないかもしれないけれど、
あたしはこの時間、ここに生きていた。

それで終わり。

それでもいい。

雪美はシャツにくるまれているその下で、
傷だらけの左の腕を右手でそっと撫でた。


※この物語はフィクションです。

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