人と人はなぜ別れるんだろう。こんなにつらいのに。……だから玉置浩二さん「行かないで」①
車を運転していた。歌がラジオから流れてきた。旋律はゆったりとしている。哀感が車中に広がった。
♫♫……なにも見えないなーにも
ずっと泣いてた だけど悲しいんじゃない
温かいあなーたに触れたのが嬉しくて
ああ、行かないで 行かないで
どんなときでも離さないで…♫♫
切なさが、胸にズキンと来た。
3年前の秋。車の窓外には、北海道の澄んだ青空が広がっている。
◇
自宅に戻り調べた。流れていた曲は玉置浩二さんの「行かないで」だと分かった。
https://www.youtube.com/watch?v=sNghEp18lwo&list=RDGMEMCMFH2exzjBeE_zAHHJOdxg&start_radio=1
作詞は松井五郎さん、作曲は玉置さんだ。
つくられたのは、1989年。フジテレビの開局30周年記念ドラマ「さよなら李香蘭」(合計約5時間)の主題歌だった。
ドラマは、ユーチューブにアップされており、通して見た。楽しめた。
主演の李香蘭役は、沢口靖子さん。
当時24歳。演技ぶりは、いまも視聴率の高い「科捜研の女」と同様で、〝棒〟である。
〝棒〟とは、つまり、役柄がなんであれ、結局俳優と役を貫く棒があるように沢口キャラが前面に出てくる。
しかし、ともかく沢口さんはなんとしても美人。
〝棒〟が、かえって美しさをひきたて神々しい。
ドラマの途中、身にまとう衣装の種類数はおびただしい。チャイナドレスを中心に、洋風、和風、女子学生風…。
いいなあ。
◇
曲「行かないで」は、ドラマの本当のラスト、李香蘭を乗せた日本への引き上げ船が、岸壁を離れる場面で流れる。
玉置さんの歌声が響くのはここの1度だけだ。もったいない気もしたが、その分一度きりの哀切が際立つ。
この曲をカラオケで歌えたらいいなああ。
だいそれたことを思った。
身の程知らずである。
(続く)