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君の唯一の彼氏になりたかった。

君の中で唯一の存在になりたかった。

誰かの埋め合わせ。

誰かの代わりとして。ではなくて

他の人では代用ができない。

ただ一つだけの存在でいたかった。

ただそれだけなのに。

____

静かな帰り道、君がふと夜空に言った。

「私、彼氏できたんだよね」

僕には大きすぎて唐突すぎる事実だった

”夏鈴”とは出会って約15年。

ずっと片思いをしていたのに

誰かも知らない他の男に取られていた

「そうだったんだ、おめでとう」

「〇〇は彼女できた?」

小さい時から夏鈴しか見ていなかったよ。

そんなこと言えるわけもない

「できてない。夏鈴が羨ましいよ笑」

正確には、夏鈴の彼氏が羨ましかった。

「〇〇もすぐできるよ」

夏鈴からしたら励ましたつもりかもだけど

僕からしたら心を突き放されたようだった。

「どこかにいい人いないかなー!」

夜空に向かって叫んでみる

でも、一番いい人は隣にいるんだけどな。

「紹介してあげよっか?」

「ううん、大丈夫笑」

「〇〇もすぐ彼女できるよ。」

そんな適当に言わないで欲しかった

「そうかな?」

「〇〇は優しいし、かっこいいし、」

本来なら恥ずかしいことも平然と言う姿

僕はこういうとこに惹かれていた。

多分、これから先もずっと。

「高校の時とかみんな好きだったよ?」

みんな。の中には夏鈴は入っていないのだろう

一番好かれたい人に好かれなかった。

「ありがと。なんか自信ついた笑」

笑うことも疲れた。

もう夏鈴の隣は僕では無くなるのか。

それが辛くて寂しくて、嫌になりそうだった。

・・・

彼氏ができても前と変わらず2人で会っていた

彼氏さんに勘違いされないだろうか。

「彼氏とは最近どうなの?」

「まあまあかな。会えてないし」

その理由は僕なのではないか。と、心配になる

好きな人の恋愛の邪魔はしたくない。

「勘違いしそうだから言うけど、〇〇のせいじゃないよ」

心が読まれているようで

少し怖くなった。

「勘違いなんてしてないよ」

「そう。ならいいけど」

とっさに嘘をついた。

バレてなさそうだが、少しバレてる気もした

・・・

ある日夏鈴からメッセージが来た

「私の家に来て。」

なんかめんどくさそうだから無視した

すると着信が来た

「なんで無視したの」

「めんどそうだから」

「いいから来て。」

少し声が震えている気がした

「わかったよ。すぐ行くから」

言い終えると、電話は切られた

急いで家に向かった

・・・

チャイムを鳴らすと鍵が開いて部屋に入った

「いきなり呼び出してどうした?」

この言葉と同時に抱きつかれた

困惑したが、その意味は間もなく理解した

僕の肩で泣いていた

声をあげながら何分も、ただただ泣いていた


「、ごめん、服濡らしちゃった、、」

「気にしなくていいよ」

肩から顔を上げた夏鈴の目は

赤く腫れていた。

「、彼氏に浮気されてた」

「、、そうなんだ」

僕にはなんて返せばいいかわからない

でも、浮気したやつを許せなかった

「あのさ、〇〇」

僕は予想外すぎる言葉を聞くことになった

「私と付き合って」

「、、え?」

「今すぐにでも私を襲って、?」

「、、夏鈴、?」

「いいから早く、、お願い、、」

夏鈴はまた泣きそうな目で抱きついてくる

「全部、〇〇が上書きしてよ、、」

「、ごめん、それはできないや」

「、、なんで、?私の事嫌い、、?」

「ううん。ずっと好きだよ。」

「、、じゃあ、!」

「でも、今付き合ったら夏鈴がもっと辛くなりそうだから」

「、、意味わかんない、、」

また泣かせてしまった

こんなに夏鈴を傷つけたあいつも許せないが

一番許せないのは僕自身だ。

・・・

いつの間にか夏鈴は眠っていた

ベッドまでゆっくり運び

僕は帰ることにした。

「、一人にしないで、、」

また泣きそうな声で言われてしまっては帰れない。

「大丈夫。ここにいるから」

「、、ありがと」

夏鈴が眠りについたのを見て安心したのか

僕も寝てしまった。

・・・

朝起きると夏鈴はもういなかった

でも、置き手紙があった


昨日はごめん

私が言ったこと全部忘れて。

でも、〇〇が友達で良かった。

またね。

夏鈴より

友達で良かったか、笑

・・・

あの日から僕たちは会っていない

お互いに合わせる顔がないのだろう



僕は君の中の唯一の存在になりたかった。

誰かの埋め合わせ。

誰かの代わりとして。ではなくて

他の人では代用ができない。

ただ一つだけの存在でいたかった。

ただそれだけなのに。

だから僕は

「君の唯一の彼氏になりたかった。」

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