何回過去に戻っても
人生の教訓は誰かが不意に放った「何故か心に残っている言葉」に隠れているような気がします。
たまに、過去に戻ってやり直したいという甘い考えをしてしまう時ってありませんか?
あの時こうしていれば、こう言っていれば。
もしかしたら今の自分はもっと違うものになっていたのかもしれないと、自分を守るための言い訳に使ってしまいます。
例えば麻雀中に。
あの時字牌を切らなければ、国士無双を和了ってたじゃんとか、赤ウーピン引くんだったらこれ残しといたのにとか。
冗談はさておき、大切なものを失って後悔したり、嘆いたりする時にあの時こうしていればとか、行動していればとか悩む経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
プロポーズ大作戦というドラマが大好きです。
ずっと好きだった幼馴染と自分ではない人との結婚式の日。想いを伝えればよかったと後悔する主人公が、過去にタイムスリップして、思い出をやり直すという、山下智久さんのドラマです。
僕が好きなのは、山Pの初々しい演技とか、設定の面白さも、もちろん最高なのですがそれだけではありません。結末に惚れたのです。
何度も過去にタイムスリップしてきた主人公が、最後に気がつくことは、「結局自分は自分でしかない」ということです。
どれだけやり直したって、勇気の出ない自分も、肝心なところで失敗する自分も、はたまた幼馴染のことがどうしても諦めきれない自分も、全て含めて今を生きている「自分」でしかないと気づくのです。
主人公はその後、「今」の自分をやり直すことに成功するわけです。
ただ、このドラマがすごく好きで、何回も何回も繰り返し見ましたが、僕は過去に戻ってやり直せたらという意味のないことをまだ考えてしまいます。
やっぱり、いざドラマからのメッセージとして提示されると、その時ばかりはそう思っても、天邪鬼な自分が「所詮ドラマだからな」と言って邪魔してくるような、そんな感覚です。
何故か心に残っている言葉がありました。
それは麻雀中の出来事です。
今回ばかりは冗談ではなく、本当に麻雀をしている時なのです。
大学時代に絶対に勝てないと思うぐらい麻雀が強い男がいました。
そいつは麻雀をしている時でもおちゃらけていて、それでいて飄々としているのですが、結果を見たらいつも勝っている。そんなやつでした。
とある日に、彼が出した牌は明らかに誰かの和了牌でした。
それを出してしまったらその日はもう負けが確定する。それくらい危ない牌でした。
案の定、他の誰かが和了り、その日はそいつの負け。僕が初めての負けているところを見た彼は帰り際にこう言いました。
「いやーでも俺100回打っても、100回あれ出してたわ」
この言葉が何故か心にずっと残っていました。
彼は過去の自分の過ちをあっさりと自分の中で肯定していたのです。
きっと僕は、「今の負けている自分を過去のせいにして認めていないのだな」とその言葉をふと思い出した時に感じました。
過去をやり直したところで、結局僕はもう一度同じことを繰り返してしまいます。
それどころか、結局自分を守る癖は全然変わらないのだと思います。自分でも呆れるほどに。
残念ながら二度と過去と同じ状況は起こり得ません。
常に人生はラストチャンスの連続です。
だからこそ、過去の負けている自分を認めて、今の自分をやり直していくことしか僕にはできないんだなと思います。
明日の自分は今日の自分を後悔すると思いますが、「100回やり直しても、100回同じことするなぁ」と思って、諦めて受け入れるしかないのかもしれないなと考える麻雀の帰り道でした。