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金曜の私にふれる読書会 〜「手の倫理」 伊藤亜紗 著〜

2024年5〜6月に糸島市の前原商店街にある「atelier MOMENT TEXTILE」の店主である指方千奈夢さんと一緒に読書会を開催しました。

「金曜の私にふれる読書会」というタイトルで伊藤亜紗さんの「手の倫理」を4回にわたって読み進め、対話をする会。4回を終えた今、すっかりこのイベントタイトルと本が好きになりました。

はじまりは2月

きっかけは、千奈夢さんから「お店で読書会をやりたいなーと思っていて、和音ちゃんの力を借りたい!」と連絡をもらったことでした。LINEの履歴をさかのぼると2024年2月2日から話が始まったようです。

【2月】
本を少し読んでみたものの難しく感じる。
千奈夢さんと話しながら、どんな人に参加してほしいかを考える。それをもとに千奈夢さんがイベントの概要文を考えた。

【3月】
イベントのタイトルや日付を決定。千奈夢さんが「梅雨のしっとりした時期がいい」と言ったのが印象的だった。
栞の形をしたDMが完成。千奈夢さんがデザインの色や配置、紙の素材を選んでいく様子を初めてみた。

【4月】
イベントページができていよいよ集客開始。糸島市や福岡市の本屋さんやカフェでDMを配った。FacebookやInstagramにも投稿した。投稿することに慎重な千奈夢さんと、躊躇がない自分が対象的で面白かった。

【5月】
グランドルールを考え、配布資料を準備した。千奈夢さんがつくると配布資料までおしゃれになる。いよいよスタート。

振り返ってみると結構前から準備をしているなと思います。こうして千奈夢さんと互いに補い合いながら一つのことを進めていく体験は、私にとって貴重で楽しいことでした。

生成的なコミュニケーションから生まれる贅沢な時間と空間

毎回、読書会の数日前に千奈夢さんと集まって参加者の皆さんと一緒に読みたい箇所をピックアップしたのですが、それを選ぶのも楽しい時間でした。

【第1回】「序」
【第2回】「第3章 信頼」
【第3回】「第4章 コミュニケーション」
【第4回】「第5章 共鳴」、「あとがき」

第1回から千奈夢さんが2種類のドリンクとお菓子を用意してくれて、カフェのようなメニュー表まで準備されていたことに驚きました。それに反応してか、第2回からいつも参加者の誰かがお菓子の差し入れをしてくれました。まさに、本の中に出てくる「生成的なコミュニケーション」を目の当たりにしているようで面白かったです。

そして、円形のテーブルの真ん中には、いつもさりげなく季節のお花が飾られているんです。他にも机や椅子、グラス、照明、BGMの選曲など、千奈夢さんがつくる空間が贅沢な時間を引き立てていたと思います。

同時に、「このお店の世界観=千奈夢さんの世界観」ではなく、これも千奈夢さんの一側面でしかないということを何度も思い出しました。というのも、「手の倫理」の中で「1人の人間の中に多様性がある」という話がでてきたからです。きっと参加者の皆さんも、職場や家族の前では今とまた違う一面を見せているのだろうと思います。

その人のどの面が引き出されるかというのもまさに生成的なコミュニケーション。こんな自分もいたのかという驚きや、それがあっても良いと感じられる安心感が得られる場になっていたら嬉しいです。

回を重ねる面白さ

2ヶ月にわたって同じ本を同じメンバーで読んでいきました。事前に読むのではなくその場で一緒に読み、そのときに響いた箇所や思い浮かんだ体験を話します。

時間をかけて読む面白さは、その本の世界を長く味わえることと、参加者同士のお互いの関係性が変わっていくのを感じられることにあると思います。

人やモノ、そして、目に見えないものも対象に含めた「ふれる」や「さわる」にまつわる話。心が温かくなる話や笑ってしまう話、しんみりする話、ずーんとくる話、答えの出ない話、想像するのが難しい話など、毎回様々なエピソードと共に様々な感覚が呼び起こされました。

そして、人にふれた思い出を話そうとすると、圧倒的に小学生くらいまでの時期に遡ってしまうのを痛感します。そもそも人にふれる体験が減るというのもあるし、体験があったとしても話題に出すのを躊躇してしまう。

それでも、回を重ねるごとに「ここまで話しても大丈夫」という境界線が緩んでいくのを感じました。

第4回の最終回では、同性との接触や異性との接触の話があがり、もう少し回を重ねるとさらに踏み込める話があるような気がしました。もうこれで終わってしまうという気持ちがそうさせたのか、理由はわかりません。実際にもっと踏み込んで話したときに、話せてよかったと思うのか、話す必要がなかったと思うのかはわかりません。

でも、「第6章 不埒な手」も皆さんと一緒に読めばよかったと思いました。

心が満ち満ちた感覚

4回目が終わった夜、前原商店街を歩きながら千奈夢さんが「この終わった後の心が満ち満ちた感覚って何なんだろうね」と言ったのを聞いて、しみじみとこんな感覚を共有できて嬉しく思いました。

私も毎回「糸島市の前原商店街でこんな金曜日の夜を過ごせるなんて、こんな贅沢なことがあったのか!」と少し信じられない気持ちになりました。オンラインの読書会もよいけれど、対面での読書会はさらに良い。

参加者の1人の方が「この読書会で休むことを思い出しました」と言ったのも強く印象に残りました。会場へ移動して、本を読んで、人と話しているのに、心が休まった感覚になるって不思議ですよね。

気づけば未来の心配や過去の反省から離れて、今、目の前に興味深いものがある。
今浮かんだことを、まとまらないままこの場に出すことができる。
今浮かんだことを、この場に出さずに味わっておくこともできる。
同じ文章を読んでも他者はこんなにも自分と違うことを思うのかと、世界が広がる。

そんな金曜の夜を過ごした週末は、私も自分に優しくできたような気がします。

参加者の皆さんの感想

最後に、参加者の皆さんの感想を原文のまま紹介して終わりたいと思います。声をかけてくれた千奈夢さんと、伊藤亜紗さんが引き寄せてくれた出会いに感謝!!

そして、またこんなお誘いが舞い込んできたら嬉しいです。

自分では理解できなかった内容がみんなと話をすることでなんとなく腑に落ちる感覚、読書会を通して他の方の体験や感覚に触れることができる特別な空間でした。
自分自身ともゆっくり向き合い、無理せず、感じたままに話しても誰も否定せず受け入れてもらえる場、この機会に自分で飛び込まなければ出逢えなかった方達とたくさん出逢えた貴重な時間でした!
自分を解放できて自然体でいれたので2週間に1度集まるこの日がとても楽しみでした!
素敵な企画をありがとうございました!

犬型セラピー?!ロボット?パトランという重たい触覚を重視したぬいぐるみを開発し、製造販売しています。そこで、触覚に関する勉強をよくしてきました。今回は、初心にかえるという意味で、この読書会に参加しました。伊藤亜紗さんの文章を、謙虚に読み解いていく、また自身の体験を交えて、等しく会話をするスタイルで、毎回、特別な時間を過ごせたように思います。

金曜の私に触れる読書会、このコンセプトどおり金曜の夜にちょっぴり自分タイムが持てる幸せ時間でした。本当に素敵な大人時間。同じものを読んでいながら様々な角度の見方、解釈、バックヤードに描かれる風景が違い、それを表現すると新たな見方が重ねられ物事の考え方に厚みが増す感じが面白かったです。

自分へのご褒美になる時間でした。感謝です。

企画の素晴らしさもさることながら、司会進行がとても素晴らしくて安心して流れに身を委ねることができました。「漂わせてもらった」という感じです。

仕事や家庭とは違う関係の中で、純粋に自分の考えや言葉を発してみなさんと話し合え、とても貴重で楽しい時間になりました。
それぞれの方が自分の心で話してらっしゃる雰囲気が印象的でした。

チェックイン、チェックアウトの時間で、仕事から頭を切り替え、読書会の時間に入り込むことができました。【さわる、ふれる】がテーマで個人的な経験に分け入る場面も多かったのですが、主催者の方々やみなさんで作る雰囲気がとても良くて、お互いが気持ちよく語れる場でした。たくさん考えることができて、自分や他人にふれる機会になって楽しかったです。
ありがとうございました。

お知らせ

次回は、2024年8月に「atelier MOMENT TEXTILE」で「金曜の私にふれる読書会」を開催予定です。詳細は、「atelier MOMENT TEXTILE」のInstagramでご案内しますので、お楽しみに!

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