【ぶんぶくちゃいな】岐路に立つ「新小売」

5月15日、中国のIT大手「阿里巴巴 Alibaba」(以下、アリババ)が2019年(ママ)第4四半期(2019年1月から3月)と2018年年間それぞれの収支報告を行った。それによると、2018年の売上は前年比51%増となった。

また傘下のECサイト「淘宝 Taobao」(タオバオ)のブランドアーケード「天猫 Tmall」のユーザー数は昨年1年間で1億以上も増え、月間アクティブモバイルユーザーは7.21億ユーザーと、前年同期比1.04億ユーザー増えたという。実際に取引も前年比31%増と順調に増大しており、日本でも一般には「何をしているのかよくわからない」と思われているアリババが、実際に好調に売上を伸ばしていることを日本のメディアも伝えている。

一方でこの週にはアリババや「騰訊 Tencent」(以下、テンセント)とともに中国IT3強「BAT」として名を馳せた「百度 Baidu」(以下、百度)の今年1月から3月までの第1四半期収支が14年ぶりに赤字となったことが明らかになり、また売上も予想より低かったことも話題になった。

今や中国政府も頼る小売消費の最前線を行くアリババとテンセント、そしてすべてのオンライン活動の要といわれた検索エンジンから重心をAI事業や自動運転車などの産業方面にシフトした百度では、ともに3強と呼ばれた時代を引き合いに出すのも古臭い感じがするのも否めない。

とはいえ、大型産業化に向けた研究開発に業務の主力を置き始めた百度が今後、いかに変化していくのかはまだ予想がたたないし、一方で個人消費に支えられたアリババとテンセントがすべてにおいて順風満帆というわけではないことは知っておく必要がある。

その意味で注目に値するのが、「中国ニュースクリップ」でも取り上げた、アリババ傘下が提唱する「新小売」事業の看板だった「盒馬鮮生」が初めて支店を閉鎖するというニュースだ。

同クリップで取り上げたように、これをもって「新小売の危機?」「アリババ挫折!」と騒ぐ必要はないのかもしれない。だが、新小売が転換点を迎えているという事実は否定できない。そこで、今回は実際に現地で体験しているわけではない我われに見えていない新小売について、現地のメディア報道から整理してみる。

●「新小売」とは

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