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【読んでみました中国本】野嶋剛「台湾とは何か」(ちくま新書)

最近、どこの出版社も新書に力を入れている。わからんでもない。何かを理解したい、本を読みたいと思ったら、わたしも近頃はまず新書で手に入れようとする。手軽だし、お値段安めだし、だいたいが読みやすい。無駄な装丁がないのも良い(まぁ、これは人それぞれだが)。出版社にとっても装丁費用や高価な印刷代を使わずに決まったフォーマットに流し込めばいいだけなので、コストはかなり抑えられる。

新書の主要ターゲットは「知識欲、向上心のあるビジネスマン」なのだそうだ。もちろん、出版社によって多少のブレはあるだろうが、ビジネスマンがちょっとした移動の際にも読めるよう、手軽に、そして小刻みに本を開いては読み続けることができるように構成されている。デザインが無機質なのも、ビジネスシーンで取り出しても恥ずかしくないというイメージなのかもしれない。

内容も実際に自分が出してみて理解したのだが、ハードカバーならどこかの連載をつなぎあわせて再構成すれば出版できるが、文字数が10万字とずっと少ない新書にはまず「一貫した論点」が求められる。エッセイ風の一話読み切りがばらばらと並ぶより、論点で引っ張り、読者にある種の緊張感を与えて最後まで読み続けてもらわなければならない。だから叙情的な話はハードカバー、単刀直入に論を展開するのが新書という感じ。ある意味、遊び部分がないから書く側も論点に熱い情熱を持っていないと書き進められない。

本書の特色はなんといっても、そんな「情熱」が、熱く、ドクドクと脈打つほどに詰まっていることだ。

著者は朝日新聞社の台北支局長として2007年に赴任して以来、「野嶋さんの記事なら安心できる」と台湾通をうならせる記事を連発した。著者によると、一般には親中派と見られている朝日新聞で、駐在中の3年間に500本以上の署名記事を書いたそうだ。日本の新聞では中国との距離感から台湾により近いのは産経新聞とされてきたが、昨今の朝日新聞の台湾発記事は産経を含む他社よりも大きく取り上げるケースも増えているという。

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