【ぶんぶくちゃいな】経済活性化が引き起こす全国人材争奪戦

日本はフレッシュマン/ウーマンが初々しい4月も過ぎ去り、5月病もさすがに克服できただろう時期だが、9月に入学システムを取る中国ではこれからが卒業シーズン。最近のニュースを眺めていても、そんな「季節感」を示すような話題がメディアを飾り始めている。

中国では日本の大学生ほど早くから就職活動をすることはあまりないが、昨今の学生は大学2、3年生くらいから長期休暇期間を使ってめぼしい企業にインターンに入って、事前に就職への種まきをするようになった。

とにかく毎年700万人以上の大学あるいは大学院卒業生が社会に出るため、競争率が非常に高いことに加えて、「社会のエリート」と目されるようになった大学卒業後の最初の就職先は、これから少なくとも半世紀を生き抜いていくための重要な出発点になると思われているからだ。

そこで最大の関心事は「戸籍」だ。この「ぶんぶくちゃいな」でも過去なんどか触れてきたが、中国の戸籍制度は出生地に結び付けられており、本人が他地区に引っ越したからといって自由に移動できないシステムになっている。

だから、かつては入隊するのが土地を出るための近道だった。もちろん成績が良ければ大学に行って、公務員や国有企業の職員になるか、あるいは教師になれば国が優先して赴任地の戸籍を取ってくれることになっていた。

だが、今ではそれはかなり狭き門である。だから、多くの人たちが一部の戸籍配分を持つ大企業のほか、戸籍は移動できなくても安定した仕事と収入によって身の安全をはかりたいと願うようになってきた。そのため成績優秀で都会の大学に進んだものの、進学先の都市で就職が見つからず絶望した学生が自殺したというニュースも毎年この時期に散見される。

定住先はなんといっても、「一級都市」と呼ばれる北京や上海、深センや広州が人気だ。これらの都市は平均賃金の高さでもトップ4だが、一方どこも人口過密が大きな問題になっており、2016年には常住人口(現地の戸籍を持っている通常の居住者数)の上限を北京2200万人、上海2500万人、深セン1480万人、広州1550万人に制限すると宣言している。

そのためにまず取られたのは不動産対策で、2016年最初の2カ月間に、深セン、北京、上海では中古住宅の価格がそれぞれ同期比で52%、25.7%、17.4%も引き上げられた。

それでもほしい都市の「戸籍」。北京や上海といった超人気大都市に対して、今年は地方都市が激しい人材奪取攻勢をかけていると話題になっている。そしてその煽りを受け、これまではほっておいても人材が集まっていた北京や上海もうかうかしていられなくなり、人材獲得戦に乗り出した。

●北京の焦り

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