【ぶんぶくちゃいな】王五四「キミはおバカなときだけ誠実だ」
ハーグ仲裁裁判所が下した南シナ海領有権問題への裁定。中国はその主張が退けられた。だいたい仲裁裁判に求められても出廷しなかったのだから、その「敗訴」はもともと予想の範囲内。その証拠に中国では裁定発表前夜から政府系メディアは警戒感丸出しの記事を流し続けていた。つまり、裁定後の「厳しい反論」は準備された演技といえる。ならば、その演技の先にいかなる「落とし所」があるのか。意外なシナリオが見えてきた。
7月12日のハーグ仲裁裁判所による、南海諸島をめぐる紛争裁定は、中国が「古来歴史的な領海」とする主張を退けた。中国は無視する構えを見せている。「またかー、掟破りの中国」、世界にケンカを売るようなその態度にそう思った人は多かったはずだ。
王毅・外相は厳しい顔を崩さないまま、仲裁裁判所がいかに「違法」か、この裁定がいかに「理にかなっていない」かを繰り返し述べている。中国のメディアを見ても、政府の発言に沿ったものばかりが強調され、少しでも疑問を抱くような意見はSNSから次々と消されている。
中国国内で素直にそんな「議論」を眺めている中国人なら、政府の立場には非がなく、逆に世界が中国にケンカを売っていると思い込み、激昂する仕組みになっている。実際に中国在住日本人の中からもそんな激昂する人たちを複雑な気持ちで見守っているというコメントが流れてくる。
だが、中国人コラムニスト、宋志標さんはそのコラムの中で、こう述べている。
《長い間、南海問題について庶民が知っていたのは、「自古以来,固有領土」(古の昔から固有の領土である)の8文字だけだった。それ以上の説明はほとんど目にしていない。アメリカが南海問題を口実にアジアへの口出しを再開してからも、この視点は前進しなかった。時間をかけて植え付けられた観念は愛国情緒を高めたものの、時局の複雑さに伴って受け身になった。》
《今のところ、南海仲裁について価値のある評価、あるいは知的意義のある記事はすべて政府メディアではなく、多くが民間のシンポジウムを題材にしたもの、あるいは個人メディアによって提供されるものばかりだ。ある国の国家戦略レベルの問題が8文字でその討論の範囲が限定されてしまい、その背後にある宏大で複雑な国際法の背景や運用の現実が省かれてしまうのは、残念なことである。》
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