【ぶんぶくちゃいな】戦狼から戦馬へ、荒ぶる民たちはどこへ行く?

今週から北京では1年に1回の二大政治会議(全国政治協商会議と全国人民代表大会)が開幕し、華語メディア及び中華系英語メディアにはトップニュースとしてそこでの話題が並ぶ。

今年の二大会議での最も大きく注目されたのは、過去30年以上続いてきた国務院総理の記者会見が取り消されたことだった。その御蔭で各メディアが拾ってきた、李鵬、朱鎔基、温家宝、李克強ら歴代総理の記者会見での「絡みっぷり」がなかなか個性的であり、面白く、逆に今回の会議がいかに「形ばかり」のものになってしまっているかがよく分かる。それでも、中国担当記者はこんなつまんない会議に張り付いていなくちゃいけないのだから、ただただお疲れ様、である。

そんな調子なので、筆者は並ぶニュースのタイトルを読むだけで基本的に二大政治会議の話題はスルーしているが、8日の香港紙「明報」には「王毅:米国の弾圧は最終的に自らを害するものに」「王毅:台湾独立支持は火に油を注ぐこと」「王毅:故意の侵害には法律、不合理な挑発には理性で」というタイトルがずらずらっと並んだ。

まぁ、記者会見したのが「戦狼外交」の始祖でもある王毅・外相だからメディア側も「それっぽい」言葉を選んでタイトルにしたのだろうが、相変わらず意気盛んだ。とはいえ、王外相の発言にはかつてほどの「戦狼」っぷりが見られなくなっているのも分かる。対米関係の言葉をまとめた記事ではさらに、「信用や自信、道理、公平性や競争とは? 誤解を解くための対話強化を」とあり、記者会見でのトーンは以前に比べてずっと落ち着いたものだったことがうかがえる。

中国もさすがに米国主導の世界的制裁に疲れてきているのか? それとも、「戦狼」サイクルが懐柔期に入っただけなのだろうか? とはいえ、翌9日には「戦狼」大使の先鋒として知られる盧沙野・駐フランス大使が「中国はこれ以上、その才能を人前で隠す(韜光養晦)必要はない」と強気発言したとも伝えられているので、外交部内での足並みは必ずしも揃っているわけではなさそうだ。

だが、ここ10年近く続いてきたそんな「戦狼」が国内で「こだま」を引き起こし、むやみやたらな「非愛国」討伐を叫ぶ「戦馬」行動なるものが出現していることはこのメルマガ第488号でも触れた。だが、その「こだま」はその後さらに民間から公人へ、さらには企業討伐へと拡大し、このままでは新たな革命でも起きそうな勢いとなってきた。


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