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月刊「読んでみましたアジア本」

日本で出版されたアジア関連書籍の感想。時には映画などの書籍以外の表現方法を取り上げます。わたし自身の中華圏での経験も折り込んでご紹介。2018年までメルマガ「ぶんぶくちゃいな」(…
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#安田峰俊

【読んでみましたアジア本】世界のあちこちに存在する「中国」を拾い上げる/安田峰俊『中国vs.世界 呑まれる国、抗う国』(PHP新書)

2023年度の四川省成都市主催のSF大賞「ヒューゴー賞」にまつわる騒ぎについて記事を書こうとさまざまな資料を読み漁っているとき、欧米SFファンや関係者が訴える「疑惑」の既視感に困惑した。

外国の権威ある大賞の名誉や栄誉に預かろうとする中国の狙いは今に始まったことではない。そしてその目的遂行のためにできる限りの組織票を動員して自国に有利な状況を作るための、ゲリラ的な活動はお得意である。さらにはそう

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【読んでみましたアジア本】外国人労働者を求め続ける日本が行き着くところは?︰安田峰俊『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』(角川書店)

なかなか刺激的なタイトルの1冊。たぶん、このタイトルだけで「もうお腹いっぱい」になってしまう人も少なくないだろう。だが、それは間違いなく、この挑戦的な言葉遣いがもたらす「衝撃」を狙って敢えてつけられている。

帯の「ルームメイトは逃亡しました」という言葉もまた刺激的だ。実のところ、たしかに本書の中には「ルームメイトは逃亡して姿を消した」というケースが紹介されているけれども、それをまるで週刊誌的に大

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【読んでみました中国本】30年前のあの日は人々にとって何を意味するのか:安田峰俊「八九六四 『天安門事件』は再び起きるか」

◎「八九六四 『天安門事件』は再び起きるか」安田峰俊(角川書店)

「八九六四」。なんと刺激的なタイトルにしたものだ。

一般の日本人はほとんどぴんとこないだろうが、中国語のネット情報に触れている者なら一目見ただけで説明はいらない。1989年6月4日、あの天安門事件の日を意味している。

改革開放派だったが失脚したまま亡くなった胡耀邦・元中国共産党総書記の死がきっかけになって、政治改革を求めて天安

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