祖父を亡くして
人工呼吸器を外して1時間経つか経たないかで祖父は息を引き取った。
病理解剖に回すからということで家に連れて帰ってくることは出来なかった。
私は毎日祖父の部屋に入り遺品を撫でながら話しかけている。
ねえじいじ、年が明けたよ。
寂しかったねずっと。
ばあばと向こうでもう会えたかな?
幸せに笑ってる?
そう問いかけながら涙を流す。
私が祖父にしてあげられたことはもっと
あったのではないだろうか。
でも私は祖父は早く祖母に元にいきたいのではないかと思っていた。
ほんとは1度目に倒れた時に本人が何と言おうと病院に連れていけば…私は判断を誤ったのではないか。そんな思いが自分の中にはあった。
だけど無理やり生きながらえることが祖父にとって幸せなこととは思えなかったから私には分からない。
悲しみが癒えないまま年を越してしまい、電話1つかけてこない彼にはイライラするばかり。
周りも気を使って連絡をしてこないのはありがたいことだ。
気を紛らわす為に祖父の葬儀で流す曲を考えた。
ショパンのピアノ協奏曲第1番、第二楽章。
愛に満ちた曲。旅立ちのショパン。
これみよがしに別れの曲や葬送のソナタを流すよりよほどいいと思う。
49日まで死者の魂はこの世に留まるというが私は一刻も早く祖父を祖母に会わせてあげたい。
きっとずっと会いたかっただろうから。
向こうには先だった息子もいる。
彼が亡くなった時奥さんが祖父に、私たちに吐いた言葉をそれに便乗した彼の奥さんの父も私は一生許せない。しかし彼女もまた数年前この世を去ってしまった。あなたのことはもうどうでもいいからどうかあの世でも祖父を傷つけないでくれ。
私は亡くなった今もあなたを許していない。
どうかこれ以上祖父に何も言わないで。
貴方はそれだけ守っていればいい。