宇田侑平

静岡県沼津市出身。小説家。下層社会とルサンチマンをコンセプトに、底辺日常系小説を書いています。取材や対談のご依頼は、無償でも対応できる可能性がございます。DMかメールまでお願いいたします。いつでも、どこでも。wanpakutsk@gmail.com

宇田侑平

静岡県沼津市出身。小説家。下層社会とルサンチマンをコンセプトに、底辺日常系小説を書いています。取材や対談のご依頼は、無償でも対応できる可能性がございます。DMかメールまでお願いいたします。いつでも、どこでも。wanpakutsk@gmail.com

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    宇田侑平の小説集です。

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【短編小説】君と雪と怪人と【一話完結】

 まったく、溶けたゴムのように煩わしい夏だった。真夏の暑さには、いい加減うんざりしていた。秋風が吹く頃、僕は都会の暮らしから逃げ出した。社会生活、責任、食べていくことに嫌気がさして、朝も夜も魘されて、掃き溜めのような町から這い出るように、雪の降る町を目指した。    肩の凝る列車に揺られ、北国の町に辿り着くと、降っていたのは雪ではなく雨だった。生温く、細やかな雨に打たれ、僕は安い劇場に駆け込んだ。  千円のチケットと、五百円の瓶コーラを購入し、その劇場に入ると、席は全て埋ま

    • ChatGPTと書評の相性【小説家の夜休み vol.4】

      おはようございます。 宇田でございます。 小説を書かせるとてんでダメなAIですが、既に出来上がった小説の評論をお願いしてみたらどうだろうかと、気になったので実践してみました。 こちらは、私のnoteに公開されている短編小説です。ChatGPTより、一度に読み取れる文字数は500文字程度と回答をいただきましたので、こちらで小説をブロックごとに分けてから送信し、最終評価をいただきました。 以下、ChatGPTによる書評。 この小説は、主人公の内面的な葛藤と彼が出会った女性

      • 【映画感想文】ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ 毒素を抜けないもどかしさと、ジョーカー予備軍の開き直り【※ネタバレあり】

        おはようございます。 宇田でございます。 ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(監督:トッド・フィリップス 主演:ホアキン・フェニックス 公開:2024年)のレビュー記事を投稿いたします。 鑑賞日は2024年10月12日、鑑賞方法は劇場。 土曜日の朝一で観に行きました。金曜日の夜に観ていたら、少々危なかったと思います。ちなみに劇場内は、国内公開二日目ということもあり、ほぼ満席でした。 自分の人生に最も影響を与えた映画は何かと問われた時、2023年以降の私であれば、百回聞かれて百回

        • 私という物書きが抱えるSNSマーケティングの課題。今後の戦略。損切りか塩漬けか【小説家の夜休み vol.3】

          おはようございます。 宇田でございます。 こちらの記事に綴った通り、TikTokとYouTubeに参戦してみたものの、完全にコケました。 短編小説の朗読動画(15分前後)のフルサイズをYouTubeに公開し、その一部分をTikTokに公開しておりましたが、これが見事にペケを出しまして、TikTokでは君と雪と怪人との朗読動画で2000再生を更新したものの、肝心のYouTubeフルサイズが11再生だったり、いいね率が1%に満たなかったり、外国人のフォロワーが突如として増加し

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        • ChatGPTと書評の相性【小説家の夜休み vol.4】

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          13本

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          【短編小説】芸能なのか任侠なのか【一話完結】

           或る日の夕暮れ、さる芸能事務所に足を運んだ柊元真事は、微睡みの手前で揺蕩う若い受付嬢に言い放った。 「柊元って者だけど、社長さんいますか?」  まだ眠たそうな口ぶりで、彼女は答えた。 「はあ、どのようなご用件でしょう?」  柊元は、ジャケットの左内ポケットから名刺を取り出し、受付台に叩きつけた。 「小説家の柊元真事が来たと、社長に伝えてください」 「あの、大変恐縮ですが、本日お約束はされていらっしゃいますか?」 「いらないね。そんなもん」 「申し訳ございませ

          【短編小説】芸能なのか任侠なのか【一話完結】

          YouTubeとTikTokに参戦した底辺日常系作家について【小説家の夜休み vol.2】

          おはようございます。 宇田でございます。 2024/9/26より、TikTokとYouTubeの運用を開始いたしました。 以下、各リンクです。 YouTubeチャンネル TikTokチャンネル 現状、読み上げAIによる小説朗読動画をメインに投稿する戦略をとっております。今後は、より販促活動に繋がる動画を企画していきたい所存でございます。 また、原則として完全フルサイズの公開はYouTubeのみとなりますので、ご了承ください。 本来、かの玄人技に等しき行為は小説家らし

          YouTubeとTikTokに参戦した底辺日常系作家について【小説家の夜休み vol.2】

          【短編小説】ジョーカーチャンス、ジョーカーダンス【一話完結】

           東京の北側には、あやしい風が吹いている。新宿より先に進むと、いつも謎めいた風が吹いている。その辺りで風が吹いても、町は音を立てない。世界は静かに人を見下ろし、蔑如するかのように空が濁る。その救いようのない雰囲気が、大西からすれば酷く暗澹たるものに思えた。  風が止み、埼玉に入った。列車は不愉快な轟音を響かせながら岩槻の住宅街をずっと奥に進む。すぐ隣に寄り添う女の顔色を窺いながら。大西は、震える喉を正して言った。 「それで、君のオヤジさんってのは、本当にただの公務員なんだ

          【短編小説】ジョーカーチャンス、ジョーカーダンス【一話完結】

          【映画感想文】空気人形 完全体セルと完全体板尾創路【※ネタバレあり】

          おはようございます。 宇田でございます。 空気人形(監督:是枝裕和 原作:業田 良家  主演:ペ・ドゥナ 公開:2009年)のレビュー記事を投稿いたします。 鑑賞日は2020年頃、鑑賞方法はDVDレンタル。 是枝監督の隠れた名作です。芸人兼俳優の板尾創路さんが、かなり良い味を出しています。 超サイヤ人2の覚醒した悟飯に大敗した完全体セルも、死の淵から甦り、パーフェクトセルと化し、太陽系を破壊するほどのエネルギーを手にしました。悟飯との勝負も、ベジータのアシストがなければ僅

          【映画感想文】空気人形 完全体セルと完全体板尾創路【※ネタバレあり】

          ステキブンゲイからの戦略的撤退【小説家の夜休み vol.1】

          おはようございます。 宇田でございます。 ステキブンゲイに公開していた、横乗り囚人の転記が終了したので、先述のサイト側のページは閉じたいと思います。 『横乗り囚人』は、底辺日常系作家としてのスタイルを確立させた渾身の一作であり、元々は2023年のステキブンゲイ大賞に応募していた作品でもあります。受賞には至りませんでしたが、日間純文学ランキングで最高1位を獲得するなど、多くの方に届いたものかと存じます。が、如何せん使い道がなく、選考終了後の権利関係が微妙、単行本にするには少

          ステキブンゲイからの戦略的撤退【小説家の夜休み vol.1】

          【長編小説】横乗り囚人 episode 7【完結】

           巧は、コールセンターオペレータに転身して以来、高村という男の存在を心底鬱陶しく思っていた訳だが、明確な縦線上にある関係が為に、耐え続けることを余儀なくされていた。それが今となれば、優位に立っているのは彼の方である。  先刻の愚かな自爆発言を再度引き出し、言質を取るや、然るべき機関に訴え出ようものならば、高村は処分を免れない。これはしめたと思い、服の上から手探りに携帯電話を探してみるが、見当たらない。今度は巧が「しまった!」と言いかける事態となった。  この期に至るまでの

          【長編小説】横乗り囚人 episode 7【完結】

          【映画感想文】こころのふた~雪ふるまちで~ 小越春花の中に雲上の天使が見えた。映画はストレートな良作【※ネタバレあり】

          おはようございます。 宇田でございます。 こころのふた~雪ふるまちで~(監督:北川瞳 主演:小越春花 公開:2024年)のレビュー記事を投稿いたします。 鑑賞日は2024年6月15日で、鑑賞方法は劇場。 地方創生のコンセプトで、新潟県新潟市と燕市を舞台としたオリジナル映画となっております。高石明彦プロデューサーによると、私の卒業プロジェクトは、若手発掘と地方創生を目的とした企みだそうです。本作については、プロジェクト5期目とのことでした。 群像劇ですので、主役一強という作

          【映画感想文】こころのふた~雪ふるまちで~ 小越春花の中に雲上の天使が見えた。映画はストレートな良作【※ネタバレあり】

          【長編小説】横乗り囚人 episode 6

           三 虚無  かの川井幸広という、広義では同族であった男が、突如として行方をくらました件で、少なからず喪失感に苛まれているのか、巧はそれからの数日間で、漫然とミスを犯すことがぐんと増えた。彼自身、そのミスを反省する気もなければ、今後改善に努めるといった気もさらさらないのだが、ミスの付録として付き纏う高村からの叱責が、どうも今以て鬱陶しく、今日も今日とて幾度かあの耳障りな小言を聞く羽目となることを思えば、出社して早々陰鬱な面持ちにもなってしまう。  だがその裏では、過ぎ来し

          【長編小説】横乗り囚人 episode 6

          【映画感想文】タクシードライバー 「Anytime, anywhere.」「いつでも、どこでも」【※ネタバレあり】

          おはようございます。 宇田でございます。 タクシードライバー(監督:マーティン・スコセッシ 主演:ロバート・デ・ニーロ 公開:1976年)のレビュー記事を投稿いたします。 鑑賞日は2023年春頃で、鑑賞方法はU-NEXT。後述の通り、私の人生のバイブルとなった作品です。名画座のスクリーンでも観ました。 以下、Filmarks投稿文より転記。 アイリスとの会話、終盤の銃撃戦、鏡のアドリブ等が有名だが、トラヴィスがモヒカン怪人になるまでの過程や、要所要所で入る細やかな心理描写

          【映画感想文】タクシードライバー 「Anytime, anywhere.」「いつでも、どこでも」【※ネタバレあり】

          【長編小説】横乗り囚人 episode 5

           二十時。外はまだ騒がしい。コールセンターという牢獄から放たれ、ひとときの休息を得た二人の背景が、儚くも凄絶に交錯している頃。  さしあたり静観に徹していたもう一人の論客が、重い口を開けた。 「ずうっと聞いていて、これは言ってやるか迷ったんだが、やっぱり年長者の責任として言わなきゃならん。あんたらはおかしい。ちゃんちゃらおかしいぞ」  白く伸びた髭を手で雑に整えながら、店主はそう云った。二人は、弾かれたようにそちらを凝視した。  店主は、巧と川井の顔を交互に睨みつけて

          【長編小説】横乗り囚人 episode 5

          【長編小説】横乗り囚人 episode 4

           午後の業務の大半は、眠気との不毛な争いであって、あっという間に過ぎ去る。この間にあった入電は七か八。何れも朦朧とした意識の中で応対したものだから、記憶には殆ど刻まれていない。  そして、来る十七時。終業まで残り三十分。 「……はい、そちらの書類に記載されている番号まで問い合わせて頂ければ、他社製品であっても購入から一年以内の不具合に関しては無料で対応して頂けますので、ええ、はい。おっしゃる通りでございます。他にご不明な点はございますか? はい、かしこまりました。それでは

          【長編小説】横乗り囚人 episode 4

          【長編小説】横乗り囚人 episode 3

           二 哀情  或る春のこと。蒼穹と追い風に煽られ、船橋から歩いて十分程の距離にある普遍的な雑居ビルまで足を運んだ巧は、そのビルに入り扉を閉めるや、残寒で仄かに赤らんだ掌にハッと息を吹きかけた。そして、このところの自身の体たらくを回想し、憂いた。  飯田橋の運送会社での件は、裏の事情とやらが絡んで隠蔽されたらしく、あれから二月が経った今となっても、マジモンのヤクザから追い回されるような事態には、陥っていない。なんと幸いなことだろう。  で、巧の現職はというと、コールセンタ

          【長編小説】横乗り囚人 episode 3