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赤ちゃんのための電子音楽 Dylan Henner // Performs Raymond Scott’s Soothing Sounds For Baby

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DYLAN HENNER // PERFORMS RAYMOND SCOTT’S SOOTHING SOUNDS FOR BABY


赤ちゃんのための電子音楽

紹介するのは、イギリスの作家「DYLAN HENNER ディラン・ヘナー」の2024年のアンビエントアルバム。本作はアメリカの音楽家「Raymond Scott レイモンド・スコット」が1962年に発表した「赤ちゃんが心地よく過ごす」ために作曲された電子音楽作品『Soothing Sounds for Baby』(以下 SSFB)からインスピレーションを得てディランが再解釈した音楽です。

Raymond ScottのSoothing Sounds for Baby

レイモンドのSSFBはアンビエントの概念が全くなかった時代の作品ですが、作られた目的や音楽的な特徴からアンビエントの源流の一つとも言われています。

赤ん坊の月齢(生後1-18ヶ月)を3つの年齢層で区切り、自作の電子楽器などを駆使して、それぞれの期間に数曲の音楽を作曲しています。1962年の作品ですが、自分が知ったのは2017年にリイシューされた3枚組のレコードがきっかけでした。半世紀以上前の音楽ですね。

簡単に内容を紹介すると、、、

  • 1-6カ月:音数少なめ気持ち良く眠れそうな優しい電子音

  • 6-12カ月:音数が増え少しだけリズミカルな電子音

  • 12-18カ月:その両方の要素があるより音楽に近い音

睡眠をサポートする優しい音から、赤ちゃんが喜びそうなおもちゃが跳ねる感覚の電子音、ちょっとディレイがかかったダビーな音色、テクノのような硬質でトリッピーなビートなど、現代の感覚に当てはめるとテクノミュージックやダンスミュージックにも解釈できそうな、非常に表現の幅が広いユニークな電子音アルバムです。

子どもを育てる親の立場として睡眠、遊び、食事など、様々なシチュエーションを想定して作曲したのではないでしょうか。

事実、公式ページによると本作は児童研究所と共同で、赤ちゃんがリラックスするだけではなく、遊んだり、イライラしたり、歯が生えたりと様々な時期に、心地よい刺激としての「玩具的」な効果も含めて制作されたそうです。

Dylan HennerのSoothing Sounds for Baby

原作の説明が長くなってしまいましたが、本作の紹介をしていきます。

アルバムの解説によるとディラン・ヘナーはレイモンド・スコットの先見の明や素晴らしい才能に多大な配慮をしつつ、本作を作ったと語っています。

先立って説明した通りレイモンドのSSFBは優しい電子音だけではなく、リズミカルで楽しく、体が自然と動くポップな音も収録されていました。穏やかにする以外の目的もあったのです。

それに対して本作は柔和で優しく心地良い、主張し過ぎない音色に統一されているように感じます。一貫して「赤ちゃんに穏やかに過ごして欲しい」という気持ちが伝わってくるようです。

一人の父親としてディランが考える、赤ちゃんに穏やかに過ごして欲しいという気持ちと、原作から得た解釈が一致して生まれた音なんだと思います。ぜひ両方のアルバムを聴き比べてください。

実際に子育ての現場で使おうとしてみて・・・

このレコードを購入してから、約1年後に子どもが誕生しました。アンビエント音楽が好きな私は奥さんの妊娠中から「子どもが生まれらこの音楽を聴かせたい」と期待に胸を膨らませていましたが、、、現実はそう甘いものではありませんでした(笑)

まず生まれてから暫くは赤ん坊は病院や奥さんの実家にいるので、レコードで音楽を聴かせる環境自体がありません。

ではスマホを使ったり配信などを使えばと考えると思うのですが、そもそもそのような考えに至る余裕が一切ありません。

子どもを穏やかにすることは勿論ですが、奥さんが穏やかに子育てができるようにすることも同じくらい大事なんですね。

結局、何度かBGMに使ったような気もしますが効果のほどは記憶にありません(笑

おまけ

ちなみにRaymond Scott//LightworksはJ Dilla//Donutsの同名曲でまるまるサンプリングされています。


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