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J・マスシス先生のすべてをもってくギターソロ

Dinosaur Jr.のドキュメンタリー映画『ダイナソーJr./フリークシーン』(3/25公開)がよくて、そういえば何年か前にJ・マスシス(最近は「マスキス」って表記するらしい)について書いたな~と思って、過去の原稿を引っ張りだしてみたら、もう10年ぐらい経ってた。『音楽と人』の連載コラム。しかも上の段は雨宮まみの連載で、なんとも言えない気持ちに。ちょうどそのときの話も含むZINEをつくったところだったから。

パナソニックの新型テレビが民放各局でCMを拒否られてるってニュースを見て、ヘーなんて思ってたら、たまたま同時期に買ったうちのテレビがまさにそれ! 人に言われるまで気づかなかった~。だってテレビとネット動画を同時に見られるっつっても、そんなおおげさなもんじゃないよ。画面の隅っこに小さいサムネイルが表示できて、アクセスが簡単にできるってだけ。

でも、このテレビのおかげで動画配信サービス「Hulu」も大画面で見られるようになったのね。うれしくってきっそく「サタデー・ナイト・ライブ」の最新シーズンを見てたら、イアン・ラビッシュ&ザ・ビザロスっていうセックス・ピストルズのパロディバンドのスケッチがあって、フレッド・アーミセンがジョニー・ロットンに扮してるの。オチは警察も女王陛下もシットなイアンが、なぜかマーガレット・サッチャーのことだけは好きになってしまいバンドをクビになるっていう。でもって、今シーズンでフレッド・アーミセンは卒業だというのね。骨の髄からインディロック好きで知られるあのフレッド・アーミセンが。なので最終回のラストで、もう一度、イアン・ラビッシュ&ザ・ビザロスとして登場して一曲演奏するんだけど、ゲストミュージシャンが豪華だった。スケッチにも登場したオリジナル・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズをはじめ、音楽コント番組「ポートランディア」で相方を務めていたスリーター・キニーのキャリー・ブロウンスタイン(普通に書いてるけど、スリーター・キニーのメンバーがコントやってるんだぜ!)、やはり同番組に出演していたエイミー・マン(もし家政婦がエイミー・マンだったら、というスケッチはUSインディファン必見。爆笑必至)、さらに泣く子も黙るキム・ゴードン姐さん、そしてやたらギター・ソロを聴かせまくるダイナソー・JrのJ・マスシス先生! こんな絵ヅラがSNLで見られるだけでも幸せなんだけど、それにしてもJ先生の最後の最後で全部もっていく感じはウケるな~、と。

そんなことを思っていた矢先、またもやJ・マスシス先生の総取り物件が。こちらはアメリカのインディペンデント映画『ストラッター』。製作費わずか250万円で撮られたという作品。

簡単なあらすじを。主人公のバンドマンが彼女にフラれて失意のドン底にいると、その彼女が自分のリスペクトする先輩ミュージシャンと付き合い始めたとの噂。これいかにと、先輩の経営するレコードショップに詰め寄るも、なぜかレアなサイケデリックレコードを高額で掴まされてますます落ち込むバンドマン。母親の恋人のこれまたミュージシャンである中年ロックンローラーに慰められたりもして。でもすぐに先輩も彼女にフラれてしまい、なぜかバンドマンと先輩とで中年ロックンローラーの砂漠のツアーに同行、すなわち傷心旅行へ。とにかく3人とも女のことしか頭になくて、なにかとすぐセッションしたり、あとはダラダラしてるだけっていう。でも、そのボンクラかげんが妙に心地よい。失恋した男2人の会話がこれだもの。

「欲しいものを手に入れても幸せになるだけだ」
「そうだ。俺たちが傑作をつくるなら今でしょ」

中2か! しかもこのあとグラム・パーソンズが亡くなった部屋で、グラムの遺品のジャケットを羽織りながら降霊術を試したりしているうちに、3人で雑魚寝。でも、そのとことんマイペースな感じに、窮屈な日本列島じゃ受け止めきれない、USインディのスピリッツを感じたりもするんだ。言いすぎかしら。

そんでまあ、いろいろあってエンドロールですよ。突然あの人が。そう、J先生登場! なぜか主人公の働く楽器屋に客として現れると、いろいろギターを試しながらウンチクを述べ、最後の最後でやっばり強烈なギターソロ! でも、あのいつまでも変わらぬささくれだった音色がこのグラダラした物語の終わりにふさわしい気もして、なんかちょっといい映画だったかも、なんて魔法をかけてくれるのだった。

(初出:『音楽と人』2013年9月号)

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九龍ジョー
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