なぜ解析力学を山本義隆先生の本で学ぶのか。
解析力学は量子論への橋渡しだ。それは間違いないと思う。量子論独特の文法だけで量子論は理解でき、応用できるのだろうが、やはり歴史は知りたい。§7にあるように、幾何光学に対する波動光学、そしてマクロな物体力学に対する波動力学のつながりを学び感動することに、解析力学を学ぶひとつの意義があると私は考えている。難解でも、どうしても、足掻いても美しいという直感に従って、私は学習を続けているのだ。美しいから学ぶ。という感覚をギリシャ以来、人類は忘れかけてはいないか。
光学と力学との関係を詳解した書は、少なくとも先生以外の和書には見られない。マクロ力学から波動力学へのコードは、HeisenbergやSchrodingerの神がかり的なアイデアであって、通常は説明できるものではないと書かれるが、そこに先生の視点がしっかり与えられている。
§8以降は、序論にあるように、可積分系やTodaの理論などに焦点が当てられるが、ここにL&Lや他の1950年代前後の力学書からの進化が見られる。序論の約束は守られている。このさきを読む力はまだ私にはまだないが、戸田の入門書を読むにつけ、興味は湧いてきているのである。また、相対論的力学への自然な流れも素敵だ。
表面を撫でたくらいでは解析力学は理解できない。Arnoldは、解析力学はいまや微分形式無しでは理解できないと書いているそうだが、「いまや」ではなく、きっと「はじめから」なのだ。調和振動など個々の問題に正準方程式やHJ方程式を表面的に適用して知ったとしても、もっと根っこにあるものを知らなければ、理解したことにはならないのだ。先生の書はそれを知らせてくれる。難解だが何度も何度も読めばだんだん理解できるように例もたくさんある。人生は速い。やるしかない。