免疫の仕組み その5 〜免疫の低下や異常〜

<前回までの復習>

免疫とは生物の体を守っている仕組みであり、3段階の防御機構からなっています。そして第一の防御である物理的・化学的防御、第二の防御である食作用、最後の砦である適応免疫(獲得免疫)について紹介してきました。なので今回は免疫と病気の関係を紹介したいと思います。

<インフルエンザ>

異物が自然免疫を超えて体内に侵入してくると、より強力な適応免疫(獲得免疫)が働きます。しかし、初めて侵入した異物に対しては適応免疫が発動するまで7〜10日もかかってしまいます。ですが、体には免疫記憶という仕組みがあるので次に同じ異物が侵入した時にはかなり短い時間で適応免疫が発動します。しかし、インフルエンザの場合は特徴となる構造が変化しやすく、免疫記憶が効果を発揮しにくいウイルスなのです。そのため健康な人でも、短い期間で何度もインフルエンザに感染してしまうという事態が起こりうるのです。

<日和見(ひよりみ)感染>

私たちの消化管の内壁や皮膚には、病気ではない時にも常在菌と呼ばれる多数の細菌が住んでいます。常在菌は生体に恩恵を与えてくれるものや病原性が低い細菌で構成されていて、病原体となる他の細菌が繁殖することを抑えてくれています。しかし、疲労やストレス・加齢などによって免疫の働きが低下すると、病原性の低い病原体(常在菌など)に感染して発病することがあります。これを日和見感染といいます。特にエイズになると日和見感染が起きやすくなります。その理由としては、エイズを引き起こすHIVというウイルスは適応免疫の中心的役割を果たしているヘルパーT細胞に感染して増殖し、破壊してしまします。これによって、免疫機能が極端に低下してしまうのです。

<アレルギー>

アレルギーは食物や花粉などが抗原として認識されてしまうことで起こります。つまり、外界からの異物に対する免疫反応が過剰になっているのです。アレルギーは鼻炎などの症状のみならず、血圧低下などの生命に関わる症状(アナフィラキシーショック)を引き起こす場合があるので注意が必要です。ちなみにアレルギーを引き起こす物質をアレルゲンといいます。

<自己免疫疾患>

自己免疫疾患には関節が炎症を起こしたり変形する関節リウマチや、インスリンの分泌細胞が攻撃の標的になるI型糖尿病などがあります。これは外界からの異物に対して行われるはずの免疫反応が、自分自身の正常な細胞や組織に反応して攻撃してしまうことで起こります。そしてそもそもの原因は、体内に侵入した異物が自身の細胞や成分の物質に似ていたために、対応したリンパ球が異物に似た自身の成分を攻撃してしまったという場合が多いです。

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参考文献:嶋田正和ほか14名,「生物基礎」,数研出版,(2016).

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