食前酒を飲む理由
18世紀後半にイタリアのトリノから始まった食前酒は今や世界中で定着している。ビールやワインを食事の前に飲むわけだが、なぜ食事中でも食事後でもなく食事前なのだろうか?その理由はアルコール溶液のある作用にある。実は低濃度のアルコール溶液は胃内容物の十二指腸への排出を促進するのだ。炭酸やお茶を飲むとすぐにお腹いっぱいになるが、ビールだったらガブガブ飲めるのも十二指腸への排出作用のおかげだ。このアルコールの作用によって食事前に胃が空になることで食欲が増して、食事をより美味しく食べることができる。
また、アミノ酸などのタンパク質の分解産物はガストリンというホルモンの分泌を促し、ガストリンが血流に乗って循環することで胃酸の分泌を促進する。コンソメなどのスープや味噌汁にはアミノ酸などが多く含まれており、前菜として食べると胃液の分泌が増して消化が良くなり、食欲が増進される。つまりスープは食事の前菜に最適なのである。
参考文献:系統看護学講座,「解剖生理学 人体の構造と機能1」,医学書院,(2021).