a drop 茶会 episode1
7/8-11日の3日間で東京は蔵前にある"a drop"というお店でのお茶会に呼んで頂いた。
a dropの店主 田邊さんことべったなさんを知ったのは"淹茶選手権"なるお茶をプレゼンしながら淹れるといった催しの動画を見た事がきっかけだった。
参加者が産地やお茶の特徴などを交え綺麗な所作で丁寧に一杯を出して行く中で、明らかにこの男"べったな"は独自の世界観で茶を淹れ、しまいにはその一杯を審査員に飲ます事はなく、香りだけを閉じ込めたという器を審査員に差し出した。
過去と現在と未来というテーマで自らのイメージで選んだ"過去の茶"と"現在の茶"それをブレンドして"未来"という曖昧なものを"香り"のみで表現するという見た目の野暮ったさとは裏腹に何とも粋でお洒落な構成だった。
愛がある表現だった。
何故か 悔しい と思ったのが正直な感想だった。
自分のお茶がこの男にはどう表現されるのかを試してみたいと思った。
後々聞いた話だがその時の順位は最下位だったそうだ。
それ以来彼の動きを気にしていて、ある時産地巡りで九州にくるという情報を聞いて早速
"お会いしたいです"
との旨のメッセージを飛ばした。
時間を作ってくれる事になり、わざわざ鰐八まで来てくれた。
お茶を出し、色々な会話を重ねて行く中でべったな氏が言った。
"うちでお茶会やりませんか?"
思ってもみない展開だったが、自分でももう勝負する事は決まっていた。
やりましょう。
決してうちのお茶が今まで飲んだ事がないぐらい美味しかった訳ではない事は自分が一番知っていた。
彼は私のお茶を
"愚直なお茶"
と表現した。まっすぐ、誠実に、それしかまだ茶に詰め込めていないのが現状だったが、その"まっすぐ"の深さや鋭さに何かを感じてくれたのかもしれない。
どこまで通用するか、試したかった。
私はお茶農家の家系でもなく、いち表現者としてたどり着いたお茶の魅力。作り手として、そしてそれを表現とする者としてこんなに試される場所は無いと思った。
その晩の食卓には、ビールや日本酒の瓶が並んでいた。
つづく