萎凋香に
今年は"萎凋煎茶"を作った。萎凋香と呼ばれる独特の花の様な甘い香りに出会ってからどうしても作ってみたかったのです
"萎凋"とは簡単に言えば茶箱などに摘採した茶葉を薄く広げて木陰など風通しの良い日陰に24時間放置し微発酵を促す、といった工程である。
夜の間から朝方にかけては夜露が茶葉に付きせっかく飛ばした水分がまた戻りかねないので夜間は夜露の打たない屋根付きの納屋に移動させた。
約3時間おきに天地返しをして良く混ぜる。
そしてまた翌朝、露の心配が無くなってから山に移動させた。
そのまま納屋に置いていても良さそうだが、山の木陰の方がより良い萎凋香を纏いそうな気がした。
萎凋してみて思ったのは、基本的には7センチほどの厚みで茶葉を重ねて萎凋するのだが、最後の茶葉は3〜4cmほどの厚みになった。
その厚みの薄い茶葉だけ明らかに甘い香りがより優しく香っていた。 そして厚みのある方ではほんの若干ではあるがツンと来る様な香りがあった。
うちの工場では量が多いと摘採してから蒸し始めるまでに時間を要する事があるのだが、その時に長時間置いておいた茶葉は自然と萎凋するような状態になる。しかし意図的ではないために茶葉の重なりも厚くかなりのストレスがかかっているように思う。
その時に明らかにツンと来る香りがする事がある。
その香りのほんの序章のような刺激臭がほんのわずかにするのだ。
茶葉が重なる事によるストレスでなんらかの性質が変化しているのか、もしくは水分が飛ぶ際に厚みがあると他の茶葉へと水分交換のような事が起きていてスッと水分が抜けない事が原因なのか、、恐らくはそこら辺だろう。
紅茶はウンカ(虫)に食われた方が香りのいいお茶になるというが、それも茶葉がなんらかのストレスを発するで出す成分によるものなのだろうか。。
そういったイレギュラー的な要素から思わぬ良さが生まれるのも面白いところですね。
中国茶に詳しい知人に聞いた話によると"萎凋"もただ木陰で微発酵させれば良いという事ではなくて、花の香りを出すタイミングや葉脈の具合で干し方や殺青のタイミングを決めていくらしい。ただ"時間"で縛るのではなくて茶葉の様子をしっかり見て判断する。
"萎凋"も奥が深そうだ。
なにはともあれ、萎凋香というものは出せたので大満足のはじめての萎凋茶作りでした。