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生まれて初めて泌尿器科に行ったら、想像を遥かに超えていた件

問題は症状の伝え方が9割

「会社出た。てか、今朝から○○タマが痛いんだけど。」

曇りのせいで肌寒い日が続く7月のある夜、会社の扉をあとにしながら、妻にメッセージを送った。そう、オトコの大事なアソコが痛いのだ……。

家に着き2歳の娘とお風呂に入ると、痛みが増してくる。

「イタイイタイ。パパ痛いから、早くお風呂出ようよ。」
「どこがいたいの? ここ? いたいのいたいのとんでけ〜!」

優しいのはいいけれど、恥ずかしさが嬉しさを上回っていく。

(娘よ、頼むから忘れてくれ……)

切実に願いながらオヤスミを告げたが、痛みは忘れるどころか確実に増している。

「体が痛いので、明日、通院後出社します。」

部位の明言を避け、お茶を濁すようなメッセージを会社の勤怠報告スレッドに残し、人生初めての泌尿器科に向かうことにした。

翌朝、「保育園に連れて行く係亅を妻に任せ、娘ともバイバイをする。

「パパ、びょういんにいくの? ココ、いたいの?」

昨夜の願い虚しく、私の症状を頭に刻み込んでいた娘。しかも、指を差しながら言うではないか。

(頼むから、保育園だけでは言わないでくれ!)

そう切望しながら、マンションをあとにした。

泌尿器科に好感を抱くしかなかったワケ

私が選んだのは、会社から一駅離れた定期券内にある泌尿器科。当初は豊洲で行こうとしたが、休診日だったため断念。会社の近くにあった老舗の泌尿器科は数年前の「診療報酬不正請求事件」で潰れたらしい。マイナーな科とだけあって、探すのにホント一苦労だ。

駅から徒歩5分……。痛くて歩くのも辛くなってきたが、力を振り絞り何とか辿り着いた。時計の針は、午前8時55分。診察は9時開始だが、既に5名ほどが待っている。

中には、大学生くらいの男女カップルも。しかも、男はちょっと遊んでる風……。無駄に発達した私の想像力が、

(こいつら何したんだ?)
(でも、男が一緒に来てくれるだけ、優しいのかな。)

と妄想をかきたてる。

そんな趣味の悪い一人遊びで、痛みをかき消しながら待つこと30分――。遂に名前を呼ばれた。待合室の扉を開けると、さらに扉が3枚! 予想を遥かに超えた設えに動揺してしまい、握っていたスマホを落としそうになる。だが、プライバシーに対する最大限の配慮だと気付くと、

(ユーザー体験、超考えてんじゃんwww)

と病院のUX設計に好感を抱いた。

真ん中の扉を恐る恐る開けると、ウェブサイトで見たまんまの先生が現れる。

「は〜い、ここ横になってください。」

と、お笑いコンビ「麒麟」の川島さんのような低い声で案内してくれた。ベッドで横になり、手早くエコーで診察を開始。事前に問診票で症状を詳しく伝えていたせいか非常にスムーズだし、思っていたよりも恥ずかしくない。診察室に入ってから間を置かずに即診察することで、羞恥心を持つ暇を無くしているのだろうか? そんな心遣いの行き届いた仕組みに、

(この泌尿器科、最高かよ。)

と、ただただ好感を抱くしかない。

診断された病名に、とりあえず一安心するも……

診察の結果、「前立腺炎」だった。座りっぱなしやストレスなどが原因で、30代を過ぎたあたりから発症する男性は多いらしい。模型を用いて丁寧に説明をしてくれ、ニューキノロン系の抗生物質と漢方薬を処方された。重大な病気ではなかったことに、一安心した。

だが、それ以上に「もう若くない」ということを痛感し、心が穏やかではない。数日後、友人と3人で食事をしたときも、初っ端の話題が「病気」に……。日々のストレスや不摂生で、みんな体にガタが来始めている。まだ30代前半とは言え、エイジングの波に逆らうことはできないのだ。

(まずは、意識して運動するようにしなきゃ……)

とは思うものの、なかなか運動ができていない。正直、ランチタイムにカフェでタラタラと駄文を書いている場合ではないのかもしれない。

ちなみに、あれから1週間ほどが経ち、薬も効いて痛みも治まった。歩くのも普通にできるようになり、生活への支障もない。

ただ、相変わらず、娘は指差しながら言う。

「パパ、ココもういたくないの?」

2歳の記憶力、恐るべし!

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