【洒落怖漢譯】豫感(原題:やばい豫感)
譯文
父業營繕,吾亦就之。公司在鄙,常入山谷之中。昔者暑暇之時,從父入山。樹影幽隱,有人立於其奧而不動數刻。翌日,望之了不動。某近謂之曰:「縊者也」山有靈異之域,侵則當遭禍害。嘗有樵夫錯刃自傷。又翌日,與二三人坐語,一座聞聲不知男女。圜視無人。聲呵呵不知哄笑、哀訴也。
書き下し文など
父は營繕を業とし、吾亦た之に就く。公司鄙に在れば、常に山谷の中に入る。
昔者暑暇の時、父に從ひて山に入る。樹影幽隱にして、人の其の奧に立ちて動かざること數刻なる有り。翌日、之を望むに了に動かず。某近づきて之を謂ひて曰く:「縊者なり」
○營繕:土木建築工事。 ○業…:…を生業とする。 ○鄙:邊鄙な所。田舎。 ○昔者:むかし。 ○暑暇:[現代漢語]夏休み。「暑假」とも。 ○幽隱:奧深く隱れてゐる。 ○了:まつたく(~ない)。常に否定文に用ゐる。 ○某:なにがし。或る人。 ○縊者:首吊り屍体。縊は「首を吊つて死ぬ」。
山に靈異の域有り、侵せば則ち當に禍害に遭ふべし。嘗て樵夫の刃を錯ひて自傷する有り。
又た翌日、二三人と坐語するに、一座聲の男女を知らざるを聞く。圜視すれども人無し。聲呵呵として哄笑・哀訴を知らざるなり。
○靈異:人智を超越して不思議なさま。 ○禍害:わざはひ。 ○樵夫:木こり。 ○與…:…と。ここでは副詞。 ○坐語:坐つて語らふ。 ○一座:その場に居る全員。 ○圜視:周りを見廻す。 ○呵呵:大聲で笑ふ樣子。 ○哄笑:大笑ひ。 ○哀訴:悲しげに訴へる。
【短篇】「洒落にならないほど怖い話」超こはいのだけ嚴選…。より
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