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しゃべるピアノ

『ふぁ』

ファンファーレが鳴り響いて、祝砲の合図で僕は群衆の前で歌い出した。
地獄の底から響いてくるような低音も、天使が舞い降りてきそうな高音も、奏者次第で使い分けて拍手喝采を浴びる。
そういう華やかな仕事の中心にいるのが僕だ。


僕は「せんさい」なので、メンテナンスを定期的に受ける。
一昨日も専門のメンテナンス員がやってきて、僕をあちこち点検していった。
昨日は別のメンテナンス員がやってきて、いつもとは違う点検をしていった。

おかしい。

なんだか一昨日までと昨日からでは身体の重さが違う気がする。

誰か、もう一度僕の身体をメンテナンスしてくれないだろうか。
今日も大事なセレモニーがある。
大勢の人の前で歌うんだ。

やがて、ファンファーレが鳴り響いた。
祝砲が鳴り響き、人々の悲鳴がそれに続いた。

僕は・・・僕は・・・もう、メンテナンスが不要な身体になった。

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wandasince95
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