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親知らずを抜くことになった話

とうとうこの日が来たと思った

私の親知らずは 下に2本ある
どちらも表面には出ていない
右はまっすぐに収まり
左は斜めに収まっている

今回は右の親知らずが 数年にわたって
腫れたりひいたりを繰り返していたので
「あとは 抜くしかないんですよ」
と言われた

そうか ついに抜くのかと
レントゲンを撮って現在の親知らずの
正確な場所を確認

するとあごの周りにある太い神経と
重なったような写真が出てきた

「口腔外科で抜いてください」

今抜くのかと思ったが
気が抜けた

そうか 今日ではないのか

でも 歯ぐきが腫れ
食事はあまり噛まなくても良いものを
とっていたのだが
親知らずの痛みといったら
あご全体が ぐわんぐわんと脈打つように痛む

もう どこが痛いのかよく分からない
いっそのこと抜ける場所にあったら
良かったのに

今日抜けないなんて残念過ぎる

そう思う一方で
きっと 抗生物質を処方されたぶんだけ飲んで
腫れがひいたら

なんだ まだこのままでも良いのでは?
と思ってしまいそうな自分もいる

でも もう引きさがれない
抜くったら抜くんだ 抜いてしまえ

ということで 紹介状を書いてもらい
札幌の口腔外科を受診することとなった

受付をすまして 待つこと3時間半
ようやく診察をしてもらえた

そして次週抜くこととなった

抜歯当日・・・
診察台に横になり
左腕は5分間隔で血圧をはかり
右腕は抗生剤の点滴
体には心電図を図る装置をつけた

静脈内鎮静法と局所麻酔を併用しての
抜歯だったので
先生が薬を投入してすぐに意識が遠のくのを感じた

持病の薬が元々 眠気の出るものばかりだったことも
影響しているのか
口を開けたことも
歯ぐきを切ったことも
歯を抜いたことも
縫い合わせたことも
まったく分からなかった

気がついた時には
休憩室で横になっていた

おどろいたのは そこからだった

抜歯が終わって 診察台から起き上がったことも
上着とメガネとマスクをしたことも
車いすで休憩室まで連れて行ってもらったことも
覚えていない

そして 受付で書類を受け取ったことも
お会計をしたことも
薬を受け取ったことも うっすら。。。
いや ほぼゼロに近い記憶

付き添いで 父が車を出してくれなかったら
きちんと自宅に帰れたかどうかも あやしい記憶力
おそろしい

ふとカバンを見ると
抜いた親知らずが袋に入っていた

それを見て初めて抜いた実感がわいてきた

このカシューナッツのような形をした親知らずが
悪さをしていたのかー

だけども何にも おぼえていない事のおそろしさよ

車いすに乗っている状態の時に
父に会っているのに それもおぼえていない

父いわく
ニコニコしたような感じで出てきたよと

えー!

どうしよう
私は色んな失態をおかしてきたのではないか
次週は抜糸だけど
その時のことを何か言われやしないだろうか

持病のほうで何か失態はなかったか
あーもう 色々と心配だ

穴があったら入りたいぐらいの何かをしていないだろうか
いや
穴に入るぐらいでは おさまらないかもしれない
いっそ 透明人間になりたいぐらいかもしれない
または カオナシも良いかもしれない

だけども すべてを「あー」で返す勇気はないな


使用画材:デジタル・鉛筆・色鉛筆

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