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私の友達とのその後
勢いでイケメンのギターを購入したが、大事なことを忘れていた。私は手が不器用で、小指が短い。何かの法則を表す様な指の形で弦を押さえる苦痛。これほどの痛みを伴って奏でられた音は貧相。いつも素晴らしいギタリストの伴奏で歌っている耳の肥えた私は、自分が発するこの残念極まりない音で歌うことが不本意で、歌だけの練習ならいくらでもするのに、ギターの練習はほとんどせずレッスンに通っていた。
そんな私を見かねてか、師匠は言った「ギターと仲良くなって!」
「はい」と返事をしたものの、ギターは長くは続かないなと思っていた。そしてちょっと悲しくなった。友達と仲良くできない自分。とても素敵な友達なのに。
音楽ユニットを組む相方さんが遠くからやって来ることになった。せっかくだからスタジオで練習しよう。ピアノはあるけど、ギターもあるといいね。私の友達を連れて行こう。
相方さんが私のギターケースを床に置き、ギターを取り出す作法は丁寧だった。相方さんは勢いよく弾き始めた。知らない曲のようだが、何だか楽しそうな曲だった。
弾き終わって相方さんは言った「ジプシーキングみたい」ーーちょっと意味がわからない。
そしてさらに続けた「このギターは明るい音がするね」
私は嬉しくて少し泣きそうになった。良かった。この友達は本当は明るく朗らかで楽しいやつなんだ。私と一緒だとつまらなかったかな。上手く弾いてあげられなくて、ごめん。
「このギター、あなたがこちらに来るときに弾いてもらう用にしようかな。何ならプレゼントします」と私が冗談っぽく言うと、相方さんは少し困った顔をして言った「このギターはきみが弾くべきだよ」
師匠に「ギターをやると歌がうまくなる」と言われて始めたギターを、もう久しく触っていない。私は歌が歌いたい。ギターはギターをやりたいと思った時に始めるべきなのだ。
「その時」が来るかはわからないが、友達は今もそばにいる。