ボサノバはカフェで流れているから、昼に聴くイメージだろうか。でも実は夜に聴きたくなるようなしっとりした曲も沢山。特にジョビンには。
まずは「Inútil Paisagem」。この邦題がたまらなく好きだ。あなたが戻らないなら、見るものすべて「無意味な風景」。
続いて「Por Causa de Você」。邦題は「あなたのせいで」。でも歌詞を読むと「あなたのおかげで」というニュアンスもあるように思う。あなたのせいで、残された私は悲しみに暮れている。けれど、あなたのおかげで、楽しかった日々もここにはあった。現在と過去。今あるのは思い出。
最後は「Ligia」。屈折した歌詞が、リジアという女性への真っ直ぐな想いを際立たせる。
これらはジョビンの中でも、ボサノバというよりサンバカンソンに近い曲かもしれない。サンバカンソンとは、ボサノバより以前からあった、主に失恋を歌った歌謡曲の類。だからか、私はジョビンにはもの悲しさを感じるし、歌詞に太陽という言葉が出てきても、目に浮かぶのはなぜか、夜の海に光る月。