ストケシアの造花
『おわりに
何も報われなかった。
欲しかったものは一つも手に入らなかった。
唯一残っていたものも最悪な形でボロボロに砕かれた。
思えばずっと何かに悩み続けていた気がする。
時が経つ度にどんどん目の前が暗くなってくる。何もかも分からなくなる。
周りは皆思い思いのものを手にしているのに、自分だけ何も無かった。嫌だった。
それを皆当たり前のように語られるのはもっと嫌だった。
でも振り返ってみると、色んなものであふれていたことに気が付いた。
自分が望んていたものではないけど、皆が与えてくれたものが沢山あった。
自分は何も持っていなかったのに。与えてないのに。
それが普通じゃないこと、一番幸せなことだってやっと解った。
別に今も未来なんて想像していないし、気が向いたら死んでしまうかもしれない。もし生きていてもこの先二度と会うことがない人もいるだろう。
でも今まで起きた出来事は消えない。嫌なことも、そうじゃないことも。』
四月一日に書いたメモ。
あれから少し時が経った。
色んなことがあった。周りも変わったし、自分の気持ちも常に変化している。
相変わらず行ったり来たり。
自由な時間が増えた。一人になることが増えた。勉強することが増えた。御守りを買った。少しだけ美味しい珈琲を飲めるようになった。朝起きれるようになった。ピアスを増やした。足の小指をぶつけた。腫れた。
それでも失くならない想い。
御守りが呪いになりませんように。