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#574 観光と食のシナジー 〜地域活性化のための戦略〜

前回の第一部では、地方の飲食店が直面する課題と、その解決策として「観光・スポーツ・グルメの融合」が持つ可能性について考察しました。観光客と地元住民の双方をターゲットにしながら、地域全体の魅力を高めることが、ローカル飲食店の成長に不可欠であることを示しました。

地方の飲食店にとって、観光客の流れをどのように取り込み、自店の強みを最大限に活かすかが重要なテーマとなります。観光と食は密接に結びついており、飲食店が地域資源と連携することで、単なる食事提供を超えた新たな価値を創出できます。

特に、観光客は日本の「食」を目的に旅行をすることが増えており、ガストロミーツーリズムの市場は拡大しています。ただ食事を提供するだけではなく、「どこで・誰と・どのように食べるか」という体験が重視される時代となりました。観光と飲食を一体化させることで、旅行者の満足度を高め、地域に経済効果をもたらすことができます。

本記事では、観光と飲食の相乗効果を最大限に高めるための具体的な戦略について掘り下げ、地域全体の活性化につながる方法を探っていきます。
#ガストロミーツーリズム

観光客が求める食体験とは?


観光客が求める食体験には、単なる「食事」だけでなく、食を通じたストーリーや学びの要素が含まれています。特に、地元の文化や歴史を体験しながら食を楽しむことで、より満足度の高い旅行体験を提供することができます。

「食べる」だけでなく「体験する」食文化


最近の観光客は、単に美味しいものを食べるだけでなく、その土地ならではの「食体験」に価値を見出しています。料理を味わうだけでなく、作る過程や背景を知ることで、旅の満足度が一層高まるのです。

調理体験付きの食イベント
例)長崎の郷土料理「卓袱(しっぽく)料理」を実際に作って味わうワークショップ。

市場見学+料理体験ツアー
例)地元の魚市場で新鮮な魚を選び、その場で調理して楽しむツアー。

食べ歩きと歴史探訪
例)グラバー園周辺を巡りながら、長崎カステラやちゃんぽんを堪能。

旅の記憶に残るストーリー性のある食事


料理にストーリーがあると、食べた経験がより鮮烈な思い出になります。歴史や文化を織り交ぜた食事体験を提供することで、観光客の心に残る食の思い出を作ることができます。

歴史を感じる食体験
例)出島の交易時代から続く「和華蘭料理」を提供する店で、当時の歴史を交えながら料理を紹介。

地元食材を深く知る食イベント
例)長崎の農産物を使った「産地直送ディナー」を生産者との交流を交えて提供。

テーマ性のあるディナー
例)長崎の夜景を楽しみながら食べる「ナイトクルーズディナー」。
夜景で有名な長崎ですが、意外とナイトクルーズディナーをやっているところはないんですよね。
#絶対人気が出る

観光と飲食を融合させた事例


実際に観光と飲食の相乗効果を生み出し、運用している事例を見ていきたいと思います。特に、地域の特色を活かし、新しい食の楽しみ方を提案する取り組みが注目されています。

「夜の観光×グルメ」で観光客の滞在時間を伸ばす


観光客が日中だけでなく夜間も滞在するような施策が重要です。特に、夜の時間帯に飲食を絡めたイベントを実施することで、経済効果を高めることができます。

長崎ナイトマーケットの開催
毎週末、観光地周辺に屋台やキッチンカーを出店し、観光客と地元民の交流を促す。

ライトアップ×食のコラボイベント
長崎市内では、イルミネーションと食事を組み合わせたイベントが開催されています。例えば、アミュプラザ長崎の屋上庭園で行われた「クリスマスマルシェ」では、ライトアップされた空間で特別な食事や音楽を楽しむことができます。

そのほかにも以下のような施策も一定の効果が見込めると思います。

酒蔵ツアーと地酒ペアリング
例)長崎の酒造メーカーと連携し、日本酒と郷土料理のペアリングイベントを開催。

食べ歩きチケットの発行
例)数店舗で使える「長崎グルメパス」を販売し、旅行者がさまざまな店を回れるようにする。

宿泊施設との提携で特典を付与
例)ホテル宿泊者限定の「ご当地グルメセット」を特別価格で提供。

#まだまだ出来ることがある

観光と飲食の連携による地域活性化の戦略


観光と飲食のシナジーを最大限に発揮するには、単なる飲食の提供にとどまらず、地域全体を巻き込んだ戦略が重要です。持続可能な地域活性化を目指し、観光協会や地元企業との連携を強化することが求められます。

1.観光協会や自治体との連携を強化する

飲食店単体での発信ではなく、地域全体で情報を発信することが重要。

2.「観光×食」ポータルサイトの開設

地元の観光協会が飲食店情報を一括管理し、観光客に最適な食体験を提供。

3.観光案内所での飲食店情報の発信

観光案内所に、地元グルメのガイドブックを設置し、回遊を促す。

4.インバウンド対策を強化する

訪日外国人観光客向けの施策を取り入れることで、さらに市場を広げることができます。

5.多言語対応メニューの導入

英語・中国語・韓国語のメニューを用意し、外国人観光客の利用を促す。

6.キャッシュレス決済の充実

海外観光客が利用しやすいよう、クレジットカードや電子マネーを導入。

7.SNSを活用した海外向けプロモーション

InstagramやTikTokで長崎グルメの魅力を発信。

#観光と飲食で地域活性化

まとめ


観光と飲食をうまく組み合わせることで

観光客の満足度向上
滞在時間の延長と地域経済の活性化
地域全体のブランディング強化

といった効果が期待できます。

単なる「食事を提供する場」から、「旅の目的地」となる飲食店へと進化することが、今後の地方の飲食店に求められる方向性です。観光客のニーズを的確に捉え、地域資源を活かした施策を展開することで、飲食店の存在感を高めることができます。

また、地域全体での連携を深めることで、観光と食のシナジーをより強化し、持続可能な発展を実現できます。「食」を通じた体験が訪れる人々の記憶に残ることで、リピーターを増やし、地域全体の経済を支える重要な要素となるのです。

さらに、SNSやデジタルマーケティングを活用し、観光客に対して事前に情報を届けることも欠かせません。旅行者が訪れる前から「ここに行きたい!」と思えるような発信をすることで、競争の激しい観光地の中でも飲食店の価値を際立たせることができます。

次回の第三部では、こうした戦略を具体的に飲食店がどのように実践していくべきか、その手法や成功のポイントを詳しく掘り下げていきます。
#続きはまた明日

前回の記事はこちら👇

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菅野 大輔 (ワインテイスター/食クリエーター:かんの だいすけ)
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