▍仕組み化の弊害・効率化の非効率
※この記事は「なるべく仕事をしたくない」「会社は従業員に楽をさせるべき」といった思考をお持ちの方には少し訳のわからない「もっと働かせてくれ」ということを書いていますので、あしからず…。
さて、いくつかの過去記事でも記載をしているように「会社」と「構成員」を切り離さず、「構成員同士の関係性そのもの、および同目的に向かう集団」を会社としてとらえると、組織が大きくなっていくことに伴う業務整理・生産性の改善は、自己の利益につながると言えます。
今日は、多くの組織で絶えず行われている「仕組み化」「効率化」について、少し批判的な目線から書いてみようと思います
(大前提、「無駄」は省くべきであり、底上げのための仕組みや、ノンコア業務の効率化については疑う余地もなく賛成の立場であることを明記しておきます。)
■仕組み化の弊害
現代のビジネス環境において、業務の効率化や生産性の向上を目的として、多くの企業が仕組み化を進めています。しかし、仕組み化には多くの利点がある一方で、慎重に考慮しなければならない弊害も存在すると考えています。
本コラムでは、仕組み化の弊害について詳しく探っていきたいと思います。
「仕組み化」とは、思考回数を減らす取り組みであると言えます。
■効率化の非効率
そもそも、「効率化」とは何を指すのでしょうか。
多くの方は「作業時間あたりの作業量」とでも定義しているような気がします。
もしくは、人によっては意図せず「めんどくささあたりの仕事した感=コスパ」みたいな、少しずれた意味で使っていることもあるでしょう。
これらはある意味では合っており、
経営という観点では間違いとも言えます。
私としては、「効率」「生産性」を利益率で考えています。
少し感覚的にわかりやすく要素を削ると、人件販管費あたりの売上でしょうか。
人件費を変えずに作業量だけ増やしてアウトプットが増えれば、それは効率が上がっています。生産性とも言えます。
更に、年功序列がそこまで色濃くない実力主義の会社であれば、それによって利益が出れば自分に賞与で還元されるでしょう。
上司の仕事は、「作業を楽にすること」ではなく、より高い利益を出すことで部下の給与を上げることである、とまで私は考えています。
利益を出すことで経済は周り、個人の能力が上がることでマクロ的には社会の安定や治安、いわゆる「民度」にもつながるのです。
一社、一人の差分は微々たるものですが、
社会的なムーブメントとしてここから逆行する「働き方改革」には、私は疑問を抱いています。
いわゆる世の中で言われている「効率化」が進めば進むほど、
受けられるサービスの品質は下がり、能力開発のために新たな研修を組み、待遇改善のために身を切る改革をして、結局非効率になっていきます。
便利で甘やかされた時代にあって、働きたくない人が増えました。
それは自由です。断固として守らねばならない権利です。
ただし、そういった方々は、誰かが働いた結果の恩恵を受けられなくなることを理解した上で意思決定をしてほしいと願っています。
「原始時代、電気もない中ですから、人々は今よりもっと働いていませんでした。テクノロジーが生まれ、進歩してきた現代においては、もっと働かずに生きていけるはずなのではないでしょうか?」
そんな言説を見かけますが、
現代人は享受している恩恵(当然、誰かの労働によって作られたコンテンツやインフラ)があまりにも普遍的で強大過ぎるがゆえに、普通の水準を下げないためには働かなければならないのです。
そのあたりを鑑みず、能力開発や経営の観点を抜きにした、仕事してるアピールとしての「効率化」など、ただの非効率や不平不満、経済滞留を生むパフォーマンスでしかないのです。
■ベンチャー企業における足かせ
「仕組み化の弊害」で述べた、システムベースの業務フローは、
変化の早いベンチャー企業においては、事業の成長や変革に対して足かせとなることがあります。
ベンチャー企業は、常に市場の動向に敏感であり、迅速な対応が求められます。しかし、一度仕組み化されたシステムを変更することは容易ではありません。
中堅社員が声高に「属人性を排除して誰でも同じ成果が出せる仕組みづくりを進めよう!」とプロジェクトを立てていますが、本当に経営観点で売上が伸びるのか、人的資本が積み上がる環境を担保できるのか、今一度よく考えるべきであると考えています。
最新のテクノロジーやシステムの導入には、導入する側のリテラシーや適応力が必要になります。よくスタートアップや先進気鋭の企業が最先端技術をいとも簡単に導入しているケースや、それに憧れて「自社は判断が遅い」といった不満を垂らしている社員を見かけますが、概ねそういった方はいざシステムをいれると「使いにくい」と不平を言い始めるのです。
仕組み化・システム化それ自体は素晴らしいことです。
ただ、最低限を底上げする基盤ではなく、ルールやデータ入力の工数など、いろいろな要因により「最大出力」に制約をかけてしまうことで、全体としてはそんなに合計点が上がっていない、といった「仕組み」をよく目にします。
私の部署でも、新規営業の管理のためのシステム導入の検討が進んでは頓挫を繰り返して数年になります。システムをいれるともちろん作業は楽になるのですが、システムの可変性が制約となり、新規事業が増え続ける組織においてはその保守運用がボトルネックになってしまうという判断で、ずっと迷っています。
私個人は、よくバカにされがちな「自作のスプレッドシートでの管理」に一票を投じている側の立場であり、実際にそれでかなり新規営業の成果も改善できていますし、毎年増える新規サービスも、トラブルやもれなく管理ができています。
もちろん、複雑なシートを設計・運用・自動化するための技術研鑽にはそこそこ時間を投資しましたし、メンバーにもある程度の仕様の理解を求めているので、学習にも多少時間を使っていますが、結局それによって管理する数字の全体観やロジック、性質が見えているメンバーが増え、経営的には非常に地盤のある筋肉質な組織ができてきています。
仕組みやシステムをあえて入れなかった結果、
より成果の出る体制・組織が出来上がったのです。
(さらに言えば、この土壌さえできた上でシステムをいれていくと、より生産性がブーストしていくのもまた事実です)
効率化、仕組み化にあたっては、その功罪を理解したうえで、
こういったプラスになるような立ち回りをしっかり用意して動くべきだと考えています。
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