「昨日は誕生日だったけど、誰も"おめでとう"って言ってくれやしなかった…」_「Dark Star」(1974)
「ハロウィン」「遊星からの物体X」「ニューヨーク1997」などアクション、ホラー諸作品で80~90年代のハリウッドで一時代を築いたジョン・カーペンターの監督デビュー作「Dark Star」(1974年公開、邦題:ダーク・スター)より。彼は自身で脚本を書き、音楽を作曲し、低予算で製作を行っている。後に「エイリアン」を手掛ける脚本家ダン・オバノンにとっても出世作となった。
「2001年宇宙の旅」以後「スターウォーズ」以前の70年代のSF映画といえば「絶対にシリアスでなければいけない、おふざけ禁止」という時代の要請でもあったのか、50~60年代B級SF映画に登場した怪物や宇宙人は消滅し、「未来世界ザルドス」「ソイレント・グリーン」ほか悲壮なディストピアものが幅を利かせた中、ジョン・カーペンターは本作で「スターマン/愛・宇宙はるかに」で垣間見せたようなノンキな宇宙世界を映像化して見せる。
舞台は宇宙開発の進んだ近未来。宇宙船「ダークスター」の乗組員たちは、宇宙開拓の露払いとして邪魔な惑星を爆破しながら外宇宙へ侵攻する任務に従事している。ヨレヨレの偵察船ダーク・スター号の中で、彼らは宇宙船内でさまざまな問題に直面し、コメディ的なシーンや対話がノンキなカントリー音楽に乗せて、展開される。
やがて自分の意思を持つ爆弾が命令に従わなくなってしまい、再三の説得にも関わらず宇宙船もろとも自爆しそうになるのだが…。
おそらく原生住人が存在するであろう惑星を、解体屋よろしく次々と淡々とつまらなそうに爆破させていく乗務員たちの姿は、シニカルで正直、怖い。民族同一化ほか崇高な理念を抱くわけでもなく、乗組員たちの上からの命令に従うまま、ひたすら、うだつの上がらない日常生活を送り続ける。この、笑ってよいのか笑ってはいけないのか、不謹慎さすら漂う彼らの日常が、極めてスローペースなグダグダした話運びの中に展開されるのだ。
ひとまず、話のベクトルは、ダン・オバノン演じるピンバック乗組員の付けるビデオ日記の、彼自身の誕生日に付けられた諦めとも嘆きともつかない一節に象徴されていることだろう。
つまりは、高尚なSF映画を期待すると裏切られるだろうが、早すぎた日常系と思えば受け入れられるかもしれない本作。最後の合成バレバレの宇宙サーフィンと合わせて、観終わった後、脱力感に襲われるのは、間違いないだろう。
もう一つ付け加えるとしたら:冒頭部に挿入、ダルダルすぎて本編前から我々をノックアウトさせてくる、しかし妙な中毒性があるロカビリーBenson Arizona(ベンソン・アリゾナ)は紛れもない名曲だと思います。
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