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【駐在記録】車で泣いているところをアメリカ人紳士に慰められ励まされ、最後にお祈りしてもらった話

2020年秋頃。
パンケーキとフルーツ以外
ことごとく食べるのを拒否する1歳半の息子と、
「野菜の調理方法を変えてみたら」と
簡単に言い放った夫をおいて
家を飛び出した。
家から近いショッピングモールに車を停めて
車の中でおいおい泣いていた。

だったら君が作れば。
君が献立を考えれば。
君が買い物に行って野菜を選んでよ。
君が隣に座って食べさてよ。
ご飯の時間が苦痛だ。
赤ちゃん本舗でレトルト離乳食買いたい。
ご飯作りたくない。
湯船につかりたい。
お寿司たべたい。
友達に会いたい。
日本帰りたい。
このままホテルでもとって
私のしている仕事が
どんなに大変で報われないか
君に知らしめてやりたい。

病んでいたんだと思う。

鼻水と涙の洪水をぬぐおうと、
サングラスをとって
ティッシュをとった。
その時、買い物から戻った隣の車のおじさんと
目があった。すぐに目を伏せた。
見られてしまった。
私、今どんなひどい顔してるんだろう。

10秒くらいハンドルにもたれて下を向いていた。
すると窓をノックされた。さっきのおじさんだ。

紳士:「大丈夫?ティッシュどうぞ」
私 :「・・・ありがとう。すいません。」
紳士:「どうしたの?よければ話聞くよ」
私 :「いえいえ、くだらないなので・・・
    あ、私マスクしてない」
紳士:「いいよいいよ、気にしないで。
    話しなよ。」
紳士の優しい言葉に甘えて、私はつたない英語で
朝あった出来事を話した。話してみたらなんてちっぽけで話すに値しない話だと思った。
紳士:「とても頑張っているね。
    フルーツを食べるの?
    えらいじゃないか。
    僕には息子が3人いる、
    もうみんな成人したけど
    そのうちの1人は、
    1年間チーズピザしか食べなかった。
    でも立派に大きくなった。
    だから君の息子も
    何の心配もいらないよ。
    子供はひとり?」
私 :「はい」
紳士:「1人で充分だよ。
    君は自分の国じゃないところで
    子供を育てて立派だね。」
私 :「ううううううううううう(嗚咽)」
紳士:「大丈夫、大丈夫、
    ほら、せっかく一人で外に出たんだ。
    コーヒーでも買ってのんびりしなよ。
    今頃君の旦那さん慌ててるだろうね、
    もうしばらく外にいなよ、あはは!」
私 :「ありがとうございます。
    すごく気持ちが軽くなりました。」
紳士:「君、本当に母親なの?
    ティーンエージャーみたい。
    じゃあ最後に、神のご加護があるように
    お祈りしてあげるね。
    (お祈りの言葉、
    早口でまったく聞き取れない)
    アーメン。
    じゃ、気を付けて帰ってね。」
私は車を降りて紳士を見送った。

あのときの紳士は私のこと覚えていないかもしれないけど、
私は一生忘れないだろう。
お祈りが始まったときは、
え、大丈夫かな、勧誘とかされない?
って頭をよぎったけど、
あの人がクリスチャンじゃなかったら
私に声をかけてくれなかったかもしれない。
初めてしてもらった、私のためだけの祈り。
もっと英語ができてたら聞き取れてたのになぁ。

あのときのユーモアあるかっこいい紳士、
本当にありがとうございました。
私のコロナ禍駐在生活の大切な思い出でした。

そして1年半前の私に言ってあげたい。
大丈夫、大丈夫、死なない程度に食べてるなら。
今君の息子は少し嫌いな野菜はあるけれど、
ほとんどの野菜もお肉もお魚もちゃんと食べられてるから。

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