最高のパートナー
オッサンになって、かなしい現実に気づく。四十代に足を踏み入れるまでは、揚げ物も、濃い味つけも、深夜に訪れる空腹も、「うまいもん食べて、寿命が短くなってもかまへん!」などと公言していた。
実際、血液検査をすると、コレステロールの値がすこし高いくらいで、利発な女医さんから受け取る結果用紙には、正常な数字が並んでいた。
歳を重ねてくると、そうはいかない。強情を張りたくても、現実を目の当たりにすると弱気になってしまう。
頭のすみっこに、頃合いという言葉を置いておかなければならなくなった。
だけど…。
とくに、白ごはんが基本形のぼくの食事スタイルには、何杯でもオカワリができるパートナーが欠かせない。
なんと言っても、ナスビのぬか漬けか、コンブの佃煮あたりが小皿に乗って出てくればいいけれど、満足できるものは近所のスーパーでは手に入らない。
大阪へ出てきて間もないころは市場も遠かったし、いつも、いつも用意するには値段も張った。
それでも、いろいろな工夫はできるもので、ここに書くことをためらう単純なお相手から個性派まで、カジュアルなラインナップがそろった。
恥ずかしいけれど、ここまできたら紹介しないわけにはいかない。
最初は、いちばんシンプルに「マヨネーズごはん」。
マヨネーズだけではさみしすぎるので、醤油を二~三滴落とす。かつおぶしがあればいうことない。
冷蔵庫に運よくレモンがあれば、それも風変りでうまい。
ふたつ目は、「豆腐バターごはん」。
こちらは木綿豆腐を荒つぶしして、バターと醤油をまぜてごはんに乗せる。
豆腐を使うことで、健康志向に見える。
みっつ目は、「フワフワとろろ昆布ごはん」。
とろろ昆布にたっぷりとお湯を吸わせて、膨張したらごはんに乗せる。
ぼくの好みは、スーパーで並んでいるいちばんノーマルなとろろ昆布がいい。お湯ととろろ昆布の割りあいが難しい。
ぼく的には、このとろろ昆布ごはんがいちばん好物で、よく家族旅行をする友人のHくんはその辺を心得ていて、お土産の一品にはかならずとろろ昆布の大袋が入っている。
それにしても、なかなかコロナが収束しそうにないので、天神橋筋の行きつけの店の昆布の佃煮ともかなり遠ざかっている。
郵送代を考えると、しばらく口には入らないだろう。
還暦を過ぎて、白ごはんのパートナーが恋しくなった。