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ナスがまま(週末にむけて)

 また、やってしまった。
昨日、市場でナスを買ってきてもらったというのに、すっかり抜け落ちてしまって、今日もお願いしたのだった。
 帰ってきたヘルパーさんがニコニコしながら、「冷蔵庫の野菜室がナスビだらけですけど」と、カーテンから顔をのぞかせた。

 行き場のない言いわけをモニター画面にぶつけようとすると、大好物のナスのはさみ揚げにまつわる家事ヘルパーさんたちとの微妙な認識のズレが、大量のいわれなき買いだめにつながってしまったのだった。

 ぼくの記憶に居座った「ナスのはさみ揚げ」は、コロモが山盛りついていて、ウスターソースが「これでもか!」というほどかけられていて、いかにもオッサンの体に悪そうな一品だった。
これがスタンダードだと思い込んでいた。

 だから、これまでに調理をお願いした三人のヘルパーさんには「ナスビのはさみ揚げ頼むわ」としか、伝えてはいなかった。
 結果、いただくことになったのは、カタクリでまとめられた一品になってしまった。要するに、ぼくの説明不足だった。

 こんな具合で、ナスのはさみ揚げを短い間隔で何度かお願いしたので、記憶が混乱してしまったのだった。
 これが「いわれなき買いだめ」の現実につながった。

 こんなときにかぎって、野菜が苦手なヘルパーさんや生真面目なヘルパーさんが週末までつづく。
「日頃のお世話に感謝して」などと言葉だけでも八千草薫さんになりきって、冷蔵庫の野菜室からお持ち帰りをお願いしたくても、うまく事は運びそうにない。

 合わせて十本近くあるようだ。
はさみ揚げはもちろん、揚げナス、焼きナス、マーボーナス…、飽きがこないように一日に一品~二品を考えて、バリエーションをもたせていけるだろうか。
 日持ちする感覚はあっても、意外に「新鮮さ」がポイントの野菜だろう。
特に、焼きナスは皮ごと食べたい。プリプリ感がぼくは好きだ。

 今週末は、noteへの投稿のための入力担当のヘルパーさんのエース格のひとりが登場することになっている。
 正直に書くと、入力の正確さやスピードもあるし、ぼくの言葉を聴き取る経験値の高さなども、お願いする側にとっては大切なポイントにほかならない。
 さらに、漢字にするのか、仮名にするのか、句読点の打ち方などのセンスが通じあうことも重要だ。

 でも、ぼくにとって一番リラックスできる「ポイント中のポイント」は、このまわりくどいあまのじゃくなエッセイ(?、笑)にときどきツッコミを入れたり、内容に共感したりしながら、着地点が見えそうでみえない時間を楽しんでもらえる存在だ。

 週末に訪れる予定のNくんは、不特定多数の人に感動されるよりも、見知らぬ誰かに心を停めてほしいと思いながらチマチマと書き進めている偏屈なぼくと、くつろぎながらパソコンに向かえる貴重な若者なのだ。

 それにしても、新鮮なうちに冷蔵庫のナスビを食べきってしまえるだろうか。
「あっ、そうだ!」
ご近所にオープンした元ヘルパーさんのカレー屋で、ナスビに合いそうなメニューを多めにテイクアウトして、軽く焼き目をつけてから、温めるときに小ナベに放りこむことにしよう。

 献立ごとのナスビの配分が難しくなりそうだ。

 とりあえず、明日はコロモたっぷりのナスビのはさみ揚げと焼きナスで決まりだ。食器棚のパン粉も確認しておいた。

 週末にむけて、ナスビで体調が整えられるだろうか。

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